弱小野球部の名誉挽回

第527話

　切間が構える。

(制球が甘いようだが、俺なら正確にコースにスライダーを投げられるぜ。ダサダサ一年投手君！)

　切間が不敵な笑みを浮かべる。

　陸雄が構える。

　ハインがサインを送る。

　頷いた陸雄がセットポジションで投げ込む。

　指先からボールが離れる。

　内角低めにボールが飛んでいく。

　切間がタイミングを合わせて、スイングする。

　打者手前でボールが左に小さく曲がる。

(―――安直なんだよ！)

　切間のバットの軸にボールが当たる。

　カキンッと言う金属音と共にボールが高く飛ぶ。

「くっそ！　打たれた！　灰田！　錦先輩！」

　陸雄が声を上げる。

　切間がバットを捨てて、一塁に走る。

　ボールは三遊間を抜ける。

　レフトの錦とセンターの灰田が走る。

　二人の中間の後方にボールが落ちる。

　この瞬間―――フェアになる。

　切間が一塁を蹴り上げる。

　そのまま二塁に走る。

　錦がボールを拾い上げる。

　姿勢が戻る時間が惜しいのか―――そのまま灰田に投げ渡す。

　受け取った灰田がセカンドに送球する。

「―――甘いんだよ！」

　切間が声を上げて、二塁ベースにスライディングする。

　セカンドの九衛がボールを捕球する。

　切間のスパイクに塁が触れる。

「―――セーフ！」

　塁審が宣言する。

　三塁側スタンドから歓声が上がる。

　切間が陸雄のノーマルスライダーをツーベースヒットで返した。

「―――チェリー。ボケッとすんな」

　セカンドの九衛が陸雄に送球する。

　陸雄が捕球して、黙り込む。

「陸雄君。ツーアウトですよ。ランナー一人だし、抑えれば僕らの攻撃のイニングに入れますよ！」

　ファーストの星川が声を出す。

　陸雄が頷いて、キャッチャーボックスを見る。