第450話


 ハインが立ち上がる。

 ベンチを見ると坂崎と松渡がレガースやキャッチャーヘルメットを持って、待っていた。

 駒島が打席から離れていく。

 速水がマウンドにボールを置く。

 八回の裏が終わり―――。

 10対9のまま大森高校の優勢で終わる。

 ベンチの中野監督が守備準備を終えたメンバーに声をかける。


「山田に回れば最悪で本塁打で同点延長になり、負けの確率が高まる。援護も含めて、抑えに行くぞ!」


「「はいっ!」」


 陸雄達が気合を入れて、声を出す。



 ウグイス嬢のアナウンスが流れる。


「九回の表―――白石高校の攻撃です。―――九番―――」


 九番打者が打席に立つ。

 ネクストバッターサークルに久遠寺が座る。


「僕が打席で出塁しないと山田さんまで回ってこない。山田さんなら打ってくれる」


 久遠寺が小声でそう言って、バットを強く握る。

 マウンドに陸雄がボールを持って、構える。

 打者が構える。

 ハインがサインを送る。

 陸雄が頷いて、セットポジションの投球に入る。

 指先からボールが離れる。

 真ん中低めにボールが飛んでいく。

 打者がスイングする。

 打者手前でボールが一個分落ちる。

 バットの下にボールが通過する。

 ハインのミットにボールが収まる。


「―――ストライク!」


 球審が宣言する。

 スコアボードに117キロの球速が表示される。


(よし、チェンジアップに手を出した。リクオ―――このままいくぞ)


 ハインが返球する。

 陸雄が捕球して、構える。

 打者が構え直す。

 ハインがサインを送る。

 陸雄が頷いて、投球モーションに入る。

 指先からボールが離れる。

 内角低めにボールが飛んでいく。


(ボール球だ見送ろう)


 打者が見送る。

 ハインのミットにボールが収まる。


「―――ストライク!」


 球審が宣言する。


「―――えっ?」


 九番打者が審判を見る。

 ボール球ギリギリにボールが捕球されていた。

 ハインが返球する。


(難しいコースにも投げれようになってきた。クオンジ相手に楽が出来る)


 陸雄が捕球する。

 スコアボードに136キロの球速が表示される。

 打者が悔し気に構える。




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