第448話


 九衛が陸雄に送球する。

 陸雄がマウンドにボールを置く。


「チェリー。九回の時はしっかり抑えろよ!」


「解ってるって!」


 大森高校のメンバーがベンチに戻っていく。

 八回の表が終わり―――。

 10対9で大森高校の優勢で終わる。



 白石高校の野手達が守備位置に着き―――。

 速水がマウンドに立つ。

 ウグイス嬢のアナウンスが流れる。


「八回の裏―――大森高校の攻撃です。―――七番―――センター、灰田君―――」


 灰田が右打席に立つ。

 中野監督がサインを出す。

 

(ここから変化球は投げてこない? 一球見て、ストレートならほぼ確定? 解ったぜ、中野!)


 灰田がヘルメットに指を当てる。

 速水がボールを握って、構える。

 灰田が構える。


(いくらなんでも変化球を投げすぎたじゃんか。このイニングは組み立て変えるじゃんか)


 山田がサインを送る。

 速水が頷いて、投球モーションに入る。

 灰田がジッと観察する。

 指先からボールが離れる。

 外角低めにボールが飛んでいく。

 灰田が見送る。


(打者手前でも変化しない―――中野の言うように―――)


 山田のミットにボールが入る。


「―――ストライク!」


 球審が宣言する。

 スコアボードに125キロの球速が表示される。

 山田が返球する。

 灰田が構えを解かない。


(やっぱストレートオンリーで抑える気か―――なら次から打ちに行って、ハインまで回すぜ)


 速水がキャッチして、すぐに構える。

 山田がサインを送り―――。

 速水が投球モーションに入る。


(さっきより早いテンポだな―――つまり―――)


 灰田がジッと観察する。

 指先からボールが離れる。

 外角高めにボールが飛んでいく。


(間違いなくストレート―――!)


 灰田がスイングする。

 先ほどよりも早い球速でボールが飛んでいく。

 灰田のバットの軸上にボールが当たる。

 カキンッという金属音と共にボールがサード方向に飛んでいく。


「当てやがった……冗談じゃねぇ……」


 速水が打球を追う。

 灰田がバットを捨てて、一塁に走る。

 サードがやや高めのボールにジャンピングキャッチを試みる。

 灰田が一塁に着く前に―――。

 飛んだサードがグローブでボールを捕る。


「―――アウト!」


 審判が宣言する。


「くっ! 一球目よりもちょっと早かったし―――難しいコースに当てちまったか……すまねぇ中野……」


 灰田が打席に戻り、バットを拾う。

 着地したサードが速水に送球する。

 速水が捕球して、一息つく。


「……ランナーはいない……後の二人は余裕で抑えられる……」


 速水が声を漏らす。

 灰田がベンチに戻っていく。


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