第446話
速水がマウンドにボールを置く。
「1点差だ。下位打線は厳しいが9回で逆転して、俺が抑えれば僅差で……victory(ビクトリー)さ……」
そう言い終えて、ベンチに戻っていく。
残塁していた九衛たちもベンチに戻る。
「がっはっはっ! 1点差を取り合って、終盤まで来たか。面白い展開になってきるぜ!」
九衛がそう言って、ベンチに着く。
錦が無言でグローブを着ける。
「フッ、九衛―――相手は過去のベスト8の高校だぜ。ほとんど一年の俺達がここまでやるとは向こうも思っちゃいなかっただろうよ」
紫崎がそう言って、九衛の肩を軽く叩く。
九衛がその事実に嬉しそうに歯を見せて笑う。
「がっはっはっ! そりゃあ愉快なことだぜ! 向こうも俺様達以上に必死だろうよ!」
星川達が守備準備を終えていく。
「お前達―――延長戦にさせる気は無いぞ。9回までに勝ちいくぞ!」
中野監督の言葉でメンバーが声を上げる・
「「はいっ!」」
「よーし、守ってこい!」
中野監督の言葉で大城と駒島以外が早めにベンチを出ていく。
ベンチの松渡と坂崎が身を乗り出して、グラウンド全体を見る。
七回の裏―――。
10対9で大森高校の優勢で終わる。
※
メンバーが守備位置に着き。
ウグイス嬢のアナウンスが流れる。
「八回の表―――白石高校の攻撃です。―――六番―――ピッチャー、速水君―――」
速水が右打席に立つ。
「……今度は打席で勝負してやるさ……」
速水がそう言って、構える。
マウンドのボールを拾い―――陸雄が構える。
(リクオの調子がここでやっと出てきた―――そろそろか―――)
ハインがサインを送る。
陸雄が頷く。
そのままセットポジションで投げ込む。
ボールは外角低めに飛んでいく。
(俺と同じ球速だが、遅めさ―――)
速水がスイングする。
打者手前でボールが右に曲がりながら落ちる。
そのままバットの下を通過する。
ハインのミットにボールが収まる。
「―――ストライク!」
球審が宣言する。
スコアボードに120キロの球速が表示される。
「カーブだと……冗談じゃねぇ……」
速水が構え直す。
ハインが返球する。
陸雄が捕球して、構える。
(調子が出て来たな―――リクオ。遊び球は要らない)
ハインがサインを送る。
(俺もそれ投げたいと思ってたぜ)
陸雄が頷いて、投球モーションに入る。
指先からボールが離れる。
速水がタイミングを合わせて、スイングする。
(ストレート……捉えたさ……)
打者手前で左に小さく曲がる。
バットの軸下にボールが当たる。
「スライダーだと……冗談じゃねぇ……」
カキンッという金属音と共にボールがピッチャーと打席の中間位置に転がり落ちる。
速水がバットを捨てて、一塁に走る。
マウンドから陸雄が走り、バウンドするボールを追う。
グローブですくい上げて、すぐに送球する。
速水が一塁近くまで走っていく。
塁を踏んだ星川が捕球体制に入る。
そのままグローブにボールが入る。
速水が一塁を遅く蹴り上げる。
「―――アウト!」
塁審が宣言する。
バツが悪そうに速水は打席でバットを拾いに戻る。
「……ヘッドスライディングしておけば間に合う距離だが、投手生命に響くさ……」
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