第173話
戸枝が頷いて、投球モーションに入る。
指先からボールが離れる。
内角真ん中にボールが飛んでいく。
坂崎が一歩足を後退させて、バットをスイングする。
(こ、これはストレート!)
バットと変化しないボールがぶつかる。
カキンッと言う金属音と共にボールが飛んでいく。
戸枝の左側にボールが通過していく。
ショートが走りながら、グローブを下に構える。
一塁の星川と三塁の錦は動かない。
ショートがキャッチして、一塁に送球する。
ファーストが捕球する。
「―――バッターアウト! チェンジ!」
審判が宣言する。
六回裏は15対5で終了する。
※
七回表。
大森高校メンバーが守備位置について、西晋高校の打者がやってくる。
「七回表―――西晋高校の攻撃です。三番―――」
ウグイス嬢のアナウンスが流れる。
三番打者が打席に立つ。
西晋高校の監督がサインを送る。
頷いた打者がバットを構える。
「―――プレイ!」
審判が宣言する。
ハインがサインを送る。
松渡が頷いて、投球モーションに入る。
指先からボールが離れる。
外角真ん中にボールが飛んでいく。
打者がタイミングを合わせて、フルスイングする。
打者手前でボールが真っ直ぐ沈んでいく。
(フォークボール? 当たりだな!)
あらかじめ予測していたのか打者がバットの軸にボールを当てる。
カキンッと言う金属音と共にボールが飛んでいく。
バットを捨てて、打者が一塁に走って行く。
ボールは三遊間を抜けていく。
レフトの錦がボールめがけて走って行く。
錦が捕球すると同時に打者が一塁を蹴る。
そのまま錦がショートに中継する。
紫崎が捕球して、一塁を見る。
それを見た打者が二塁に走りかけて、一塁に戻っていく。
紫崎がファーストに送球する。
「――セーフ!」
塁審が宣言する。
(これで四番のジェイクにはヒットしたとしても本塁を踏むことは無い。三番打者を越えて、走ることはアウト扱いになるしな)
ハインが座り込んだままネクストバッターサークルのジェイクを見る。
(後はホームランにさせないだけだ。相手はフォークボール対策をしていたようだが、その通りにさせて歩かせ―――五番から抑えさせる)
ジェイクが歯を見せて、ニコニコしながら打席に歩く。
「西晋高校―――四番―――センター、ジェイク君―――」
ジェイクが左打席に立つ。
「ヘイ! アメリカンボーイ。ジェイク ニ フォーボール ニ スル?」
ジェイクが楽しそうに話す。
まるで草野球を楽しむ小学生の様に無垢な笑顔でハインを見下ろす。
ハインは座ったまま答える。
「いいや。勝負させる」
ハインの返答に、ジェイクはバットを構える。
「―――オッケー。エンジョイ デキルネ」
西晋高校の監督がサインを送らない。
打てると確信しているからこそ送らないのだった。
ハインがサインを送る。
松渡が頷いて、投球モーションに入る。
ジェイクがじっくりと観察する。
指先からボールが離れる。
「インロー。シュートボール」
ジェイクが呟いて、タイミングを合わせてフルスイングする。
ボールは内角低めに飛んでいく。
打者手前でボールが左に曲がりながら落ちていく。
ジェイクがバットの軸でボールを捉える。
カキンッと言う金属音と共にボールが飛んでいく。
「イケブクロ!」
ジェイクが打ち終えて、バットを投げ捨てる。
ボールは二遊間に飛んでいく。
「させっかよ! 俺様が捕る!」
セカンドの九衞が上空に伸びていくボールをジャンピングキャッチしようとする。
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