第84話 静まり返った屋敷
眩しい朝日が顔に当たり、突然私は目が覚めた。
「えっ?!」
気付けば私は自分の部屋のベッドに横たわっていた。
「ど、どうしてここに…?」
天井を見つめながらポツリと呟く。
確か、昨夜ベッドに入り…気づけば何故か森の中で目が覚めた。そしてそこには…。
両肩を抱きかかえ、ブルリと震えた。
「ジョンがいたわ…。しかも私の命を狙っていた…まさか、ジョンが犯人だったなんて…」
その事実は私にとって相当ショックだった。
「私を恨んでいるのはノリーンだと思ったけど…ジョンはノリーンが差し向けた刺客だったのかしら…?」
そう言えばノリーンにはジョンの変身魔法が通じなかった、それに私でさえ忘れていたのにジョンの記憶が彼女には残っていた…。
「だけど、私の目からは…2人は知り合い同士には見えなかったわ…」
でも、それは演技だったのだろうか?その事をジョンに伝えれば、きっと彼のことだ。
<やはりユリアは馬鹿だな>
そう言われてしまう気がする…。
「そう言えば…今何時かしら?」
グルリと視線を動かし、部屋の壁掛け時計を見て私は目を見張った。何と時刻は午前8時を過ぎていたのだ。
「た、大変っ!遅刻するわっ!」
私は大急ぎでベッドから飛び降りた―。
****
「それにしてもどうして誰も起こしに来てくれないのかしら?しかも妙に屋敷の中は静まり返っているし…」
自室で朝の支度を鏡の前でしながら私はブツブツ文句を言っていた。
時計を見るとすでに8時半だった。
「急がなくちゃ!」
部屋を飛び出し、廊下に出たところで私は異変に気がついた。
「な、何…?」
屋敷の中は気味悪いくらい静まり返っている。まるで人の気配を感じない。それどころかうっすら霧のようなものに覆われている。
「え…?ど、どうして…?」
カバンを抱え、震えながら出口を目指して歩いてると霧にまぎれて誰か人が立っている。
え…?ま、まさか…。
すると前方から声が聞こえてきた。
「何だ、ユリア。そんな所にいたのか?随分探したぞ」
そして人影はこちらへ向かって歩いてくる。
「ジョ、ジョン…」
私の身体から汗が滲んでくる。
「よく眠れたか、ユリア?こっちは一晩中お前を探し続けて少々疲れているんだ。だから…さっさとここで死んでくれるか?」
「ほ、本気で言ってるの…?ね、ねぇ…こんな事やめましょ?は、話し合いを…しましょうよ」
震えながらジョンに言うも、彼は既に右手に氷の矢を作り出していた。
「永遠の眠りにつきな!」
そして氷の矢を投げつけてきた。
殺られるっ!
思わず目を閉じた時―。
ガシャーンッ!!
突如、廊下の窓ガラスが割れて誰かが外から飛び込んできた。その人物はマント姿だった。そして私の前に立ちはだかると右手から炎を吹き出し、あっという間に氷の矢を溶かしてしまった。
「またお前か…?」
ジョンが憎々しげに言う。
「それはこっちの台詞だ。本当にしつこい奴だな。そんなに契約が大事なのか?」
私に背を向けたままの人物がジョンに言う。そしてその人物は私の方を一瞬振り向くと小声で言った。
「いいかい?ユリア。合図を送ったら背を向けて走るんだ」
その顔は紛れもなくジョンの顔だった。
「!」
「ユリアをこっちへよこせっ!」
ジョンが剣を抜いてこちらへ向かって走ってくる。するとその人物も腰に差していた剣を引き抜くと私に言った。
「走れ!ユリアッ!」
「!」
考える間もなかった。私は急いで背を向けて走った次の瞬間―。
グニャリと視界が歪み…気づけば私は屋敷の外にいた。背後を振り向くと屋敷が見える。
「え…?そ、外…」
すると前方から驚いた声が聞こえてきた。
「ユリアッ!」
「ユリアさんっ?!」
「え?」
声の方を向くと、ベルナルド王子とテレシア王女が私の方へ向かって駆け寄ってくる姿が見えた―。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます