第77話 私の王子様?
「俺達はなかなか生徒会室に戻って来ない王子を首を長くして待っていたんだ。そしてもういい加減帰ろうかと思った時に…」
「ちょっと待って、生徒会の仕事をやらないで貴方達は帰ろうとしていたの?」
するとマテオが口を尖らせながら言った。
「おい、ユリア。話が違うぞ?話の腰を折るなって言っただろう?」
「あ、ごめんなさい。つい気になってしまったから。分かったわ、口を挟まないようにするから」
言いながら私は唇を親指と人差し指でムニッとつまんだ。
「プッ。何だよ…それ」
マテオは少しだけ笑うと再び話し始めた。
「帰り支度を始めていた時に王子があの女…ノリーンを連れて生徒会室へやって来たんだよ」
「え?そうなの…?」
「ああ、どうやら同級生に虐められて落とし穴に落されてしまったそうだ。ノリーンは爵位も低いし…見た目もまぁ…地味だからな…格好のターゲットだったんだろう?ユリアは知っていたか?ノリーンが虐められていた事…」
「知っていたと言うか、覚えているかって尋ねて欲しいわ。尤も生憎何も覚えていないけどね」
「そうか…それでたまたまそこを王子が通りかかって落とし穴に落ちていたノリーンを助け出して…酷く動揺していたらしいから、とりあえず生徒会室へ連れてきたらしい」
「そう、でも何故王子は生徒会室へ連れてきたのかしら?」
「それは俺たちを待たせて悪いと思って戻ってきたんじゃないのかな?何故生徒会室へ連れてきたのかは不明だが、王子は俺たちにお茶を煎れるように命じてきたんだ」
「はぁ…なる程…」
やはりマテオには根っからの腰巾着精神が染み付いていしまっているのだろう。恐らく王子はマテオ達にお茶菓子を用意させてノリーンを押し付けようとしていたのかもしれない。でもそこは口にしないけど。
「まぁ、それで俺たちは王子に命じられるまま…2人にお茶とお茶菓子を用意してやったのだが、その頃にはノリーンはすっかり王子に入れ込んでいたように見えたな。きっとノリーンにとって自分の王子様に思えたんじゃないのか?」
「いやいや、実際ベルナルド王子は王子様でしょう?」
「それでいきなりノリーンは俺たちがいるにも関わらず王子に言ったんだよ。『ベルナルド王子様、好きですっ!お付き合いして下さいっ』って」
「ゴホッ!」
思わず、いきなりの言葉にカフェオレを吹き出しそうになってしまった。
「おいおい、大丈夫か?」
「え、ええ…だ、大丈夫よ。それで王子は何て言ったの?」
「ああ、露骨にいやそ〜な顔して言ったよ。『悪いが、俺にはユリア・アルフォンスという婚約者がいるのだ。諦めてくれ』ってな」
「あ〜…なる程ね…」
「するとノリーン、何て言ったと思う?『婚約破棄する予定は無いのですか?』って聞いてきたんだよ」
「あぁ…そうなのね…」
でも多分もう婚約破棄出来ていると思うけど…。
「そうしたら、王子は言ったよ。今の所、そんな予定は無いってね。だから諦めてくれって。それを言われた時のノリーンの顔…恐ろしかったなぁ…ぞっとしたよ。だからユリアが逆恨みされなければいいなって思ったんだよ」
「そうだったのね…もしかして私の命を狙っていたのはノリーンだったのかしら…だけど私よりもむしろ狙うべき相手はテレシアさんの方じゃないかしら?だってどう見ても彼女の方がベルナルド王子と親しいわよ?」
「う〜ん…ユリアはベルナルド王子の婚約者で結婚することは確実だからな…」
マテオが腕組みしながら言う。
「ちょ、ちょっと待ってよ!私とベルナルド王子は(多分)婚約破棄したのよ。だから結婚なんかありえないからね?」
「え?そうだったのか…?」
「ええ。そうよ。でもマテオのお陰で助かったわ。教えてくれてありがとう」
笑みを浮かべてマテオにお礼を言った。
「あ、ああ…役立てて…良かったよ」
マテオが私を見る顔は…赤くなっていた―。
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