第10話 暗雲



リーン


山村さんのお宅ですか

はい

静香さんの主治医の武井といいます

山村さんは本庄さんの婚約者と聞きましたので

電話をいたしました

本庄さんの両親にも話がありますので

お越し願いませんか


わかりました



病院内で


実は原因がわからないのですが

片方の足も異常がみられます

最近、静香さんは何も言われませんか


いえ、特に


検査結果の上、片方の足も動かなくなります


じゃあ、先生、全く歩けなくなるのですか


もちろん、そうですが

徐々に寝たきり状態になっていきます


先生、嘘でしょ


残念ながら・・・


嘘をつかないでください

彼女は歩けるようになるために

折り鶴を折っているのです

信じているのに

今さら寝たきりになると言えるはずがないじゃないですか


残念ながら、それが事実なのです


ただいま

おかえりなさい


健一さん、今日は元気がないけど

どうしたの


ああ、ちょっと風邪を弾いたかな


風邪薬を取ってきますね

よいしょ


ああ、もう治った


本当ですか


大丈夫だよ


健一さん

折り鶴をついに999羽折ったの

後は健一さんが折ってくれるだけよ

なんだか、最近は足が軽いの


健一さん、どうして泣いているの

嬉しいからでしょ


今日は目まいがするんだ

ベッドで休むね


ゆっくりして下さいね


ああ


健一さん、健一さん

どうして泣いているの


気のせいだよ


私もベッドに行きます

そばにいきます

どうして反対向きに寝ているの

私の顔を見て

もしかして、泣いているの


気のせいだよ

本庄さんも早く寝たほうがいいよ


健一さん、円周率は覚えていないでしょ

3.62525です、サブローにこにこ

健一さんらしくにこにこして


何かあったの


ほっといてくれ

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