パーティーメンバー唯一の男子だからと追放された俺、美少女に変わって戻ってきました。〜英雄になりたいのにパーティメンバーや幼馴染から迫られて困ってます〜(イラスト有り)

あゆう

プロローグ

「たぁぁっ!」


 まるで鈴の音のような可憐な少女の声と共に振り下ろされた刃が、狂気の獣の首を両断する。

 首を斬り落とされた獣は断末魔の叫びすら上げることなくドサッと大きな音をたてて倒れ、やがて霧となって消えた。


「やったぁ♪」


 少女は自身の身の丈の倍程もある獣と相対したとは思えないほど無邪気に喜ぶ。そのままその場で小さく跳ねると、陽の光を反射しそうな程に輝いた琥珀色の髪もフワリと踊る。


「やったわね! あんな大きな魔物の首を簡単に斬っちゃうなんてすごいじゃない!」

「ミリアありがとぉ〜! えへへ〜! 頑張っちゃった!」


 駆け寄ってきたミリアと呼ばれた赤髪の少女は感嘆の声をかける。


「そうですよ。ワタクシ、補助魔法と回復魔法の準備をしていましたのに無駄になってしまいました」

「あ、ごめんね? フィオナ」


 その後ろからゆっくりと歩いてきた蒼髪の少女フィオナは、まるで呆れているかのように話すが、その表情は柔らかく微笑んでいる。


「さっすがギルド登録から僅か一ヶ月で【琥珀の剣姫けんき】って呼ばれるようになっただけあるね。ボク、嫉妬しちゃいそうだよ」

「そ、そんなっ! アイリーンの一撃の重さにはかなわないってばぁ〜」


 後ろから手を伸ばして少女の肩を抱き、少女の無防備な脇腹を軽くつついてくる銀髪の少女はアイリーン。


「あーっ! ちょっとアイリーン? ナギサに少しくっつきすぎじゃない!?」

「そうですよ。ナギちゃんだって困ってるではないですか」

「そう? え、そんなことないないだろ?」

「え? あ、うーん……困ってはない? かも?」


 そして少女の名前はハルカ・ナギサ。彼女はなんて答えたらいいのかわからないような顔で曖昧に頷いた。


「ならアタシもくっついちゃお♪ え〜いっ! んふっ、ナギサってほんとにいい匂いするよね。一緒にお風呂入ったら同じ匂いになるかな? あ! 街に戻ったら一緒に入ろっか?」

「い、一緒に!? そ、それは……あはは」


 抱きついて鼻をスンスンとするミリアにナギサは苦笑い。


「ミリアちゃんとアイリーンちゃんもずるいですわ。ワタクシだって! はぁ……ナギちゃんってホントどこに触れても柔らかいですのね。胸だってワタクシより大きいですし、こんなに柔らかい……」

「ひゃあっ!? ちょ、ちょっとフィオナ!? そんなに胸を触らないでよ! くすぐったいんだからぁ〜!」


 今度はいきなり胸を触ってきたフィオナの手を掴んで抗議の声を上げた。


「だけどアレだよね。同じでも先月抜けてもらったナギサとは全然違うな」


(!?)


 そして、アイリーンがとつぜん放った一言にナギサの体は一瞬硬直する。


「そりゃそうよ。あんなやつパーティから抜けてもらって正解だわ。おかげでこんなに可愛いナギサと仲間になれたんだもの」

「そうですよ。ナギちゃんに失礼ですわよ」

「ん、確かにそっか。ナギサ、ごめんな?」

「あはは……う、うん。ベツニイイヨー」


 ナギサは若干棒読みにも聞こえなくもない返事をすると、後ろを向いて自身の予想以上に育っている左胸──心臓をおさえた。


(や、やっば……。アイリーンの奴いきなり何言うんだよ。すげぇ焦っちゃったじゃねーか。ていうか俺、そんなに嫌われてたのか? ヤバいじゃん。絶対にコイツらにバレる訳にはいかなくなったな。こいつらの【パーティーメンバーの唯一男子だからと追放された俺が美少女になって戻ってきた】なんて!)


 そう。こそがミリア達がかつて追放したパーティメンバー、【オウタ・ナギサ】その本人であった。


 ◇◇◇


 時は遡り一ヶ月前。

 場所はテイエス王国の冒険者ギルドの中。


「なんで俺がパーティから追放されなきゃいけないんだよ!」


 一人の男がそう叫びながら拳を振り下ろしたところから物語は始まる。




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