第28話 家で勉強会
次の日、土曜日の休日に、俺の家で勉強会を開くことになった。
十一時くらいに、香澄ちゃん達が家へと来た。
「どうぞどうぞー。大きくも狭くもない、つまらない家ですけどー」
「なんで優香が家主みたいに謙遜してるんだ」
父さんと母さんの家だからな。
「へー、誠也はこんな家に住んでるんだな。初めて来たぜ」
「まあ家で遊ぶことも勉強することもなかったしな」
「二階が誠也の部屋か?」
「ああ、二階が俺と優香の部屋がそれぞれある。一階のリビングじゃない部屋は両親の部屋だから、開けないでくれ」
「了解。じゃあまずはお前の部屋の探索を……」
「させるわけないだろ」
二階に上がろうとする健吾の首根っこを掴む。
「ぐえっ! おい、そこ持ったら苦しいだろ……」
「苦しめるために持ったからな。健吾が一番中間試験で危ないんだから、しっかり勉強するんだろ」
「うっ、そうだったな。はぁ、なんで高校って試験なんかあるんだよな」
「勉強するところだからだよ」
そんなことを言いながら、俺達はリビングに入った。
リビングにはいつも食事をしている長テーブルがあるから、みんなでそこに座る。
だけど四人家族で四つしか椅子がなかったので、俺の分だけは自分の部屋にある椅子を二階から持ってきた。
「誠也の両親は何をやってる人なんだ?」
「普通に仕事してる人だよ。今日は休日出勤で二人ともいないけど」
「うちの両親は今でも新婚かってくらいの仲で、娘の私がうんざりするほどですよ」
「ふふっ、なんとなくわかるかもー」
汐見さんがなぜか俺の顔を見ながらそう言った。
「誠也くんもいつか結婚したら、いつまでもラブラブな新婚って感じがするよねー」
「俺が結婚するとしたら香澄ちゃんだから、そうなったら永遠にラブラブだろうね」
「っ……!」
香澄ちゃんがとても顔を真っ赤にして俯いている。
「香澄ちゃん、大丈夫? 顔赤いけど、熱あるの?」
「ね、熱じゃないけど、誠也のせいでしょ……!」
どうやら恥ずかしがっていたようだ、やっぱり可愛い。
そして今日は休日なので、制服じゃなくて私服の香澄ちゃんだ。
白色の大きめのパーカーに、黒のスキニーでとてもシンプルだけど、香澄ちゃんが着ればファッション誌にそのまま出れるほど着こなしている。
「今日の服も綺麗で可愛いね、香澄ちゃん! 結婚しよう!」
「……むり」
「がはっ……!」
フラれた……だが諦めない。
俺が香澄ちゃんと結婚したら、汐見さんが言ってた通り、永遠に愛を伝えまくるだろう。
「いつか私も好きな人ができたら、お兄ちゃんみたいになるのかなぁ。なんかやだなぁ」
「優香ちゃんは可愛いし、誠也くんみたいな男の子に好かれるかもよ?」
「えー、それもやですよ。お兄ちゃんだから我慢できるけど、好きな人がこうだったらちょっと嫌です」
「優香、言いすぎじゃない? お兄ちゃん悲しいんだけど?」
「お兄ちゃんのこと好きになる人なんて、変な人だからね」
「……優香ちゃん? 今、私のこと見ながら言わなかった?」
「あ、あはは、香澄お義姉ちゃんは別ですよー」
香澄ちゃんが少し怒ったかのように優香のことを睨んで、優香は誤魔化すように笑った。
「優香ちゃん、今日は私がお勉強見てあげるね」
「わ、わーい、優しい優しいお義姉ちゃんに勉強教えてもらうなんて嬉しいなぁ」
「ふふ、優しいかどうかは、優香ちゃん次第だよ」
香澄ちゃんは笑みを浮かべているが、何やら怖い雰囲気を漂わせていた。
そんな香澄ちゃんも可愛らしいな。
ということで、香澄ちゃんと優香が隣同士で座り、健吾と汐見さんがその目の前に座り、俺はお誕生日席に座った。
優香の勉強は高一の範囲なので、香澄ちゃん一人で対応出来るだろう。
「優香ちゃん? さっきからペンが動いてないけど、わからないところでもあるのかな?」
「うぇ!? い、いや、ちょっと休憩というか、その……」
「まだ始まって十分も経ってないけど?」
「……すいません、ちゃんとやります」
「うん、頑張ってね。その問題集を今日は三周するまでやるからね」
「さ、三周!? そんなやっても意味ないよ!?」
「数学は公式を覚えるだけじゃなくて、それを応用で使えるようにならないと意味がないからね。問題集を三周する頃には、それも出来るようになるから」
「う、うぅ……お義姉ちゃんが厳しすぎるよ……」
優香が泣きそうな声で問題集に取り組んでいるが、とてもタメになるはずだ。
香澄ちゃんも普通に勉強が出来る方だけど、教え方は意外と脳筋的だね。
健吾に関しては、俺がつきっきりで見て、汐見さんもそれに加わるという形だ。
「誠也、ここの公式マジで意味わからないんだが」
「三角関数な。それはこっちの公式をしっかり理解してないと出来ないから――」
「ああ、そういうことね。じゃあこの問題は――」
健吾もバカではないから、教えればしっかり理解出来る。
応用となると難しそうだが、基礎ができれば平均点は取れるだろう。
「健吾―、今教えてもらったの、私にもわかるように教えてー」
「ん? 奈央も出来ないのか?」
「確認だよ、確認。健吾が私に説明出来たら、しっかり理解してるって確認できるでしょ?」
「なるほど、上から目線なのは気に食わないが、それなら教えてやろう」
「あはは、いつも赤点ギリギリなのはどっちかなぁ?」
「くっ、今回の中間試験は平均点超えてやるよ! それに奈央にも負けねぇ!」
「おっ、じゃあ勝負する? 全教科の合計得点が多い方が勝ちね?」
「上等だ、絶対に負けねえ」
「それ、俺も入っていい?」
「誠也が入ったらお前が勝ち確定だろうが!」
「さすがに平均百点を取る可能性がある人とは勝負したくないかなぁ」
健吾にも汐見さんにも断られてしまった。
前のボウリングは勝負してくれたのに、悲しい。
――――――――――
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