第163話・穏健派と武闘派と
スターゲイザーの外交官が暗殺されてから。
次にモノリスが開くのはいつなのか、どのように取り繕う必要があるのか。
国連臨時総会及び宇宙部では、連日のように話し合いが続いている。
そんな中、事件が起きてから7日が経過するのにも関わらず、スターゲイザーの動きがなかったことを良しとした【反スターゲイザー派】の国が行動を開始。
表向きにはどう取り繕うのかについて論議はしているものの、裏では地球防衛軍とコンタクトを取り、スターゲイザーが地球と同盟もしくは条約、国交を行うのを防ごうと動いていた。
一方、国連側としてもスターゲイザーに対しての謝罪を行うことで一致。
今回の件では、スターゲイザーとの国交樹立を良しとしない反スターゲイザー派が引き起こした事件であり、地球が全ての責任を負うことはできないことを説明しつつも、可能ならば共に手を取り合うことはできないかという話し合いを行いたいと通達する事になった。
依然として窓口は地球代表団であり、万が一を考えてモノリス周辺には高い壁と屋根が急遽作られることとなった。
………
……
…
──NASAでは
「月面で異変が起きただと‼︎」
月軌道上の衛星が送り出した映像。
それは、機動戦艦タケミカヅチが月面にゆっくりと降下し、月地表から巨大なサイコロのような金属を回収している姿が映し出されていた。
「は、はい、これが送られてきた映像です。急遽、ハッブル宇宙望遠鏡でも確認しましたが、スターゲイザーの宇宙船が月面から巨大な正六面体の何かを回収しています」
「そ、それはなんなんだ? そもそも、そんなものが月面地下に埋められていたのか? いつ、誰が?」
「わかりません。ですが、これは条約違反にもつながりますが……」
そう。
宇宙資源については、どの国も独占してはいけないという地球上の条約が存在する。
これがあるからこそ、世界各国がスターゲイザーの存在を確認しつつも、そこにあるであろう資源の優先権を宣言しない。
逆に、スターゲイザーに移民さえしてしまえは、住民としての権利を主張することができるため、現在はスターゲイザーへと向かうプロジェクトが進行している最中である。
「条約違反? それは地球の国家に対してならばの話だな。そもそも月面の資源など、どの国の資源でもない。それを他の惑星の住人が回収したところで、誰も何も文句は言えないな」
「そ、それは……そうですね」
NASAコントロールセンターのオペレーターは、主任の説明を聞いて納得するしかない。
国連にせよどこの国にせよ、宇宙資源関係の取り決めはあくまでも地球での話であり、他星の住人がそれを回収したところで、何も文句は言えない。
地球が勝手に決めた事だから、我々には関係ない。
その一言で国連は何もいうことはできず、逆にいうとクレーム入れることはあっても、それに従う義理もない。
「しかし……あのようなものが埋没しているとは、今までの調査ではなぜ、発見できなかったのだろう?」
「何か特殊な金属の可能性もあります。例えば、どのような調査機器でも反応しない金属であるとか」
「……そんなものが存在したら、それこそ世界の軍事関係者が机を投げ飛ばすぞ? パーフェクトステルスじゃないか」
「はい。だからこそ、先手を打っておかないと。各国の軍事関係者はこれに気づいて動き始める可能性もあります」
そうなると、各国の諜報機関がこれまでのスターゲイザーに対しての取り決めとは別枠で動く可能性がある。
まだ月面地下に、同じような資源があるかもしれないと。
そして他国の宇宙開発機関関係でも、タケミカヅチが月面で行った謎の採掘シーンは確認されており、すぐさま対策が講じられることとなった。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
──ホワイトハウス・エリプス中央。
モノリスを中心に、一辺10mの四角形の建物が作られた。
外周を覆う銀色の光沢から、【シルバーボックス】と命名されたモノリス保護区画には、地球代表団及びその警備員関係、モノリスからの来訪者以外ははいることができなくなっている。
内部には、いつモノリスが光沢を表すのか二十四時間体制での監視が行われ、いつスターゲイザーからの来訪者があっても問題がないような体制がとられていた。
──パパパパパッ
そして、その日。
モノリスが突然虹色に光り輝くと、内部から重装甲に身を包んだ兵士が四人、ゆっくりと姿を表した。
その手には巨大な銃器のようなものが握られており、すぐさま周辺を確認し始める。
「……これはまた、なんでしょうか?」
「さあ? 地球人の考え方は今ひとつわかりませんね」
「材質はチタン合金で、防弾性を高めた複合構造体ですわ。どうしますか?」
「どうするもこうするも、このようなものを作った意図がわかりません」
ロスヴァイゼ、ヘルムヴィーケ、オルトリンデ、ヒルデガルドの四人がそう呟いていると、最後にミサキが素のままで姿を表す。
いつものラフな格好ではなく、アマノムラクモの頭首の正装である【純白の狩衣のようなもの】を身に纏っている。
──コンコン
「次にモノリスから外交官がやってきても、地球防衛軍とやらに攻撃されないようにだろ? たしかにこの程度の複合材ならアンチマテリアルライフル程度なら弾き飛ばすんだろうなぁ」
壁を軽く殴ってみるが、たしかにこの短期間で作ったにしてはしっかりとした作りになっている。
よほどアメリカは、自国が惑星間戦争の戦場にしたくないのだろう。
──ガチャッ
そして、ちょうどモノリスの正面の両開き扉がゆっくりと開くと、ヒルデガルドたちは練習通りに銃口を扉に向けた。
「ようこヒッ‼︎」
扉の向こうには、三人の人物。
その彼らは扉のこちらで銃口を向けられているのを確認すると、すぐさま両手を挙げた。
「スターゲイザーの外交官の方ですか? 私たちは地球代表団です。銃を降ろしていただけると助かります」
「そう告げて銃を降ろした瞬間に、一斉攻撃されては構いません。周辺の安全を私たちが確認するまでは、このままで行きます」
ロスヴァイゼがそう告げると、代表団はゆっくりと後ろに下がる。
同じ距離を開けてヒルデガルドたちも前に進むと、四人は建物の外に出た。
『念話モードに移行。動体反応はまあ、普通に。高出力波長確認できず』
『重力変動もありません。高エネルギー兵器の存在なし』
『サーモグラフィーによる生態感知には、周辺に潜んでいる兵士の姿を確認。ですが、全て想定内、シールズとかいう輩ですわ』
『代表団の中に賢人機関の関係者がいませんが。何かあった可能性もあります』
次々と報告が聞こえてくる。
まあ、この場合の最悪のケースは俺の暗殺だろうけどさ、どうせなら、堂々と前に出ようじゃないか。
なんのために、このホワイトハウス直上にステルスモードでマーギア・リッターを十二機も待機させていると思うんだ?
──ズィツ
四人に囲まれたまま、俺は前に出る。
「惑星スターゲイザー星王のミサキだ。この星の代表と話がしたい‼︎」
堂々と宣言。
『ピッ……SNNの視聴率が80%を越えました』
『その情報、今いる? それよりも周辺に怪しい存在は? hurry hurry』
『ピッ……いえ、多すぎまして、どうしたものかと?』
そうオクタ・ワンからの通信があった直後、俺の周辺に展開しているフォースフィールドに次々と弾痕が刻み込まれていく‼︎
まさに四方八方からの集中射撃とは、これいかにって感じだよね。
しかも、ヒルデガルドたちの重装甲服パワードスーツにも命中しているものだから、テレビやインターネットでこの光景を見ている人たちは、冷や汗どころか裸足で逃げたくなってくるよなぁ。
そして銃撃開始と同時に、代表団も護衛に守られつつ後ろに下がる。
さあ、衆人環視の中での暗殺劇、それが失敗した瞬間だぞ、地球防衛軍とやら、どう動く‼︎
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