第4話 入鹿、江戸に転生す。~意知、入鹿を連れて医師溜へと向かう~

 意知おきとも入鹿いるかれてかったさき医師いしだまりであった。


 医師いしだまりにはおもて番医師ばんいしなる医師いしめており、殿中でんちゅう表向おもてむきにて怪我人けがにん急病きゅうびょうにん場合ばあい療治りょうじたるのが彼等かれらおもて番医師ばんいし職務しょくむであり、いままさにそうであった。


 それでもいきなり出血しゅっけつおびただしいおとこ医師いしだまりあしれたものだから、そこにめていたおもて番医師ばんいし流石さすがおどろいた。


 しかもそれが若年寄わかどしより田沼たぬま意知おきともともなれば尚更なおさらであった。


 それにもして意知おきともが、


あやしげなる風体ふうていおとこ


 もとい入鹿いるかれて姿すがたせたものだから、彼等かれらおもて番医師ばんいしおどろきぶりたるや、尚一層なおいっそうといったところであろう。


 意知おきとももそうとさっすると、


「とりあえず、身共みども療治りょうじ優先ゆうせんしてはくれまいか」


 あやしげなる風体ふうていおとこもとい入鹿いるか姿すがたおどろくのは後回あとまわしにしてくれと、意知おきともおもて番医師ばんいしたちにそう示唆しさしたのであった。


 如何いかにもそのとおりであり、おどろくのは後回あとまわにして意知おきとも治療ちりょう優先ゆうせんすることにした。


 それも、出血しゅっけつしているとなればここはおもて番医師ばんいしの中でも外科げか専門せんもん医師いし出番でばんということで、天野あまの良順りょうじゅん敬登たかなりと、何故なぜ内科ないか峯岸みねぎし春庵しゅんあん瑞興よしおきまでが意知おきとも療治りょうじたることになった。


 一方いっぽう入鹿いるかはそのかん意知おきとも治療ちりょう邪魔じゃまにならないためであろう、おとこたち、もといべつおもて番医師ばんいしによって医師いしだまり備付そなえつけ屏風びょうぶでもって四方しほう仕切しきられ、意知おきとも治療ちりょう様子ようす入鹿いるかれさせぬようにした。

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