第十三回 緑の世界。その香り。


 ――サラサラ流れる水の調べ。


 そしてチカチカだけにピカピカにしながら、惜しみなく僕の体を流れる。



 出し惜しみ禁止なこの場所で、一度しかない時間を満喫し、大自然と一体になれるよう堪能する。サウナで温まった後は、そう川遊び。……思えば此処って、川も施設の一部らしいの。それは一昨年に、梨花りかが得意な泳ぎを披露した場所も含まれていたそうなの。


 その時は水着着用だったけど、生憎今日は……持ってきてなくて。でも御心配なく。


 自然の摂理、大自然の中だから……


「って、あんたまさか」

 と、可奈かなは言う。けど……そのまさかなの。


「せっかく来たんだし、もっと大自然を堪能しなきゃ。それに僕たち以外に誰もいないみたいだし、サウナ後の水風呂の代わりとも考えられるし、このまま泳いじゃうのもありかなって……」


「でも、見られちゃったら、どうするの?」


「どうするって? それは人魚としてだから、せっかくピカピカのツルツルのスベスベになったんだから、見せてあげたいくらいだよ、僕の新鮮な生まれたままの姿」


「あんたってホント大胆ね。……じゃあ、付き合ってあげるから、見られたからって泣くのはなし。それからこんだけのことをしたんだから、リフレッシュは約束よ」


 その可奈の御言葉の通り、

 僕らは堪能した。童心に帰る水遊び。


 梨花は泳ぐ、まるで人魚のように美しく。そしてせつも、……そう、梨花に続いて泳ぎが得意なようだ。まさに水中を華麗に舞う人魚たち。それに魅せられる僕と可奈。


 着飾らない憩いの場。


 透き通るような綺麗な川の水も、夕映えへと変化する。……グスッと心の中、少し寂しいような感はあるけれど、帰る時間が訪れて、裸で大自然の堪能のお時間も終了した。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る