　ハラハラ舞う桜……

　春は短く、切ないようだけれど、

　僕にはそう思えない。この女子四人の関係なら奥へ、さらに奥へと切り込めそう。

　細道は続く……

　その道程は一昨年の夏に見た風景と、ソックリそのまま。僕と梨花（りか）、可奈（かな）と三人で歩いた道程。そして今、せっちゃんが加わり共に歩む。マーチの域に達する行進へ。

　今は午後も二時。その気温は夏を再現している。

　お昼は駅前のスキの家で、四人ともメガ牛丼を黙々と食したから……

　スタミナはバッチリだ。せっちゃんというこの子の名前は……摂。これから僕らが行く所の温泉は初体験。しかしながら彼女は、お家に個人のスーパー銭湯のような設備を持っている程のお嬢様。そして温泉そのものが初めてのこと。『千佳（ちか）のリフレッシュ』という理由付けだけれど、本当のところは興味津々だからとも。

　だからキョロキョロ。

　ニコニコとしながら、全身で喜びを奏でているそんな時だ。

　あの日と同じ場所で、僕らは一昨年の夏と同じように、再会を遂げた。

　あの日、この場所で消えた松尾（まつお）芭蕉（ばしょう）さんが、また現れて再会を遂げた。

　あの日と同じように、僕らの前を歩き案内してくれるの、温泉までの道程を。もちろん芭蕉さんは、もうこの世にいない人。つまりは幽霊……

　或いは幻か、夢なのか、それももう気にならなくなった。夢現でも構わず、今目の当たりにしていることが真実。数学の方程式にも例えられそうな信憑性も露わだ。

　そして奥の細道へ続く。

　僕らが今、芭蕉さんの御案内によって、この道程を歩いているのだからね。