第二回 身も心も知っちゃうの。


 ――梨花りかもまた一人称が僕と同じ『僕』で、髪型も同じボブ。一時期は伸ばしていたのだけど、去年の夏から『夏向き』と言って切っちゃって、それ以来ずっとこの髪型。


 でも、本当は『夏向き』なんかじゃない。


 意中の人がいて、その恋に破れて……それが原因なの。僕と同じ人を好きになっちゃたから。だから僕は脱ぐ。身に着けているもの全部。パジャマも下着も、できるならその事実までも。違いって何なの? って、思ったから。どう見ても瓜二つだから……



「ちょ、ちょっと千佳ちか、何裸になってるの?」

 と、僕を見るなり、梨花はビックリしてガバッと起きたの、ベッドの上で。


 カーテン越しに差し込む日差しは、淡くも僕の裸体を照らす。何回も見られている裸だけど、全部見えちゃって恥ずかしいけれど、隅々まで見てほしいの。だって、それはね、


「朝シャンするの。梨花も一緒、洗いっこ」


「だからって、ここで裸にならなくても。……一緒に入ってあげる。髪だって洗ってあげるから、ちょっと待ってて、今起きるから」


「うん……」と、返事をしつつ、引っ張りながらブンブンしていた手を離した。裸のままで、じっと待つ。そして「行こっ」と、手を繋ぐ梨花。「うん!」と、小さい子に戻ったように浴室まで、そのまま、全裸のまま二階から、そして一階の浴室まで歩く。


 梨花は脱衣所でパジャマを脱ぐ、下着も包み隠さず。


 僕はもう既に全裸。見れば見るほど胸の膨らみも、お腹も……まあ、ボディーラインというか、髪質といい、肌の触り心地までも瓜二つ。感触に至ってもソックリそのままで、


 ……どこが違うの? とさえ、思いながら。


 それでもってビクッと感じて、ドキドキもわかるほど、いつもと違って、それで、


「千佳、何があったの? ……昨日、パパの缶チューハイをジュースと間違えて飲んでしまったから、まだ酔ってるの? 本当に大丈夫?」と、梨花は心配してくれるけれど、


「あっ、それは大丈夫。別の意味で、もっと……」と、それ以上は言えない僕だった。



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