第6話
「大丈夫ですか、ユーフェミア様」
「うーん・・・・・・」
私は魂が半分しか入っていないような虚ろな感じで、キリエに着せ替え人形のように着替えさせてもらった。だって、あんなのはお風呂じゃないし、身体はきれいになったのかも怪しいところだけれど、私の心は逆に悪くなった気がする。
(もー、何を見てもやる気が・・・)
「そう言えば、ライハルト様のおうちの御風呂は豪華だって聞いたことがありますよ」
話が変わった。
「詳しく聴こうじゃないか」
私はベビーフェイスのくせして、キリっとした顔を作ってキリエを見る。
「えっ、詳しくと言われましても、私のようなメイドには、噂程度しか・・・」
それもそうだ。
ドラマや漫画のようななんでものぞき見するようなメイドがスタンダードだと思ってはいけない。仮にそんなメイドがいたとしても、大半が殺されているに違いない。
「よしっ、切り替えて、早く行きましょっ。キリエっ!!」
「ふふふっ」
キリエが笑った。とても純粋な笑顔で、とても可愛らしかった。
でも、どうして急に笑ったのかわからず、私が不思議そうに見ていると、キリエは
「すいません。今日のユーフェミア様、いつも通りと言えば、いつも通りなんですけど、なんだか、可愛らしくて・・・」
と笑いながら話してくれた。
「可愛らしい?」
私は言われ慣れていない言葉に同性からなのにドキドキして、聞き間違いなんじゃないかと怪訝な顔でキリエに尋ねた。
「あっ、すいません。メイドの分際で主を可愛らしいなんて・・・」
キリエは深々と頭を下げたので、私は慌てて手を振って、
「いや、そんな顔を上げてよっ、なんだか、逆に可愛いって言わせているみたいじゃないっ」
「はいっ」
私がそう言うと、キリエはいい笑顔で返事をした。こんなかわいい子がこんな顔をしたら、前の世界にいたクラスメイトの男子たちなんてイチコロに違いない。
それから、私とキリエはさらに準備をして馬車に乗ってラインハルトのところへと向かった。
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