夜光視点

第95話  1月25日 愛の告白??

「そっか……私はまた同じ人を選んだんだね」


 そう呟いた私の心の中では嬉しさなのか喜びなのかわからない感情が渦巻いています。

 だって、私は同じ人を2回も好きになったことなどないから……。


 高校生になって翔くんと出会うまでは誰も好きになることはない、友達すらできないと思っていました。

 多分、心のどこかで5歳の時に出会った男の子と似ている人を探していたからだと思います。


 そんな珍しい人なんて居るはずもないのに……。

 私はそれでもその人を求めて居たんだと思います。


 だからこそ、翔くんと出会って私は嬉しかったのです。

 ずっと探して来た人が見つかった……

 奇跡は起こるんだ……

 これが私の運命の相手だ……

と、思えたから。


 案の定、翔くんと友達になることが出来て、今までの悩みは消えました。

 今では、翔くんの事を大好きになっていて、私の全てを知ってもらうため、選んでもらえるように、アピールをしているところです。


 その中で今日、今まで別人だと思っていた、今好きな翔くんと初恋のしょうちゃんが同一人物だと言うことがわかりました。


 それだけで、それだけで私はとても幸せです。

 翔くんを好きになったことが間違いではなかったと思えたから。






「美月……大丈夫?さっきから黙ってるけど……」


 気づいたら目の前に翔くんの顔が迫っていました。


「うわぁ!?!?びっくりした……どうしたの翔くん」


「どうしたのじゃないよ。さっきからずっと黙り込んでて……こっちこそどうしたのだよ」


 嬉しさのあまり私は全然話を聞いていなかったみたいです。

 お父さんとお母さんまで心配そうにこちらを覗いていました。


「ごめんごめん。ちょっとだけ昔のこと思い出してて……翔くん」


「ん?どうした?」


「その……ありがとう!!」


 私はどう伝えていいかわからなかったですが、こうしてまた出会えたことにお礼を言おうと思いました。


「なんでかわからないけど……どういたしまして?」


 なんか変な空気になってしまいました。

 お父さんがなんとも言えない顔で私のことを見ています。


「それであなた、翔斗くんに言いたいことがあったのじゃなかったの?」


「あ、そうだったね……翔斗くん、今日君を呼んだのには理由があるんだよ」


 お母さんに言われて思い出したのかお父さんの顔がとても真剣な顔に変わりました。

 翔斗くんも何を言われるのか気になっている様子です。

 私自身もお父さんが何を言うのかわからないので気になってはいます。

 変な事を言わなきゃいいのですが……


「はい……どう言った話でしょうか」


 深く息を吸ってからお父さんは話し始めました。


「美咲からは言われたかもしれないが、私からもお礼を言わせてほしい。美月が学校で楽しいと思えるようになったのは翔斗くんのお陰だと思っている。本当にありがとう。心から礼を言いたい」


 そう言ってお父さんは翔斗くんに深く頭を下げました。

 隣にいるお母さんまでも……。


 私は2人の姿を見て言葉を失いました。






 私は今まで、1人でずっと悩んできたと思っていました。

 2人を巻き込んでまで悩むことじゃないと思っていたから。

 2人は関係ない、こんなこと聞いたら悲しむ、そうやって自分の中だけで悩んで悩んで翔くんと出会って解決出来ていたと思っていたから。


 ですが、実際は違いました……。

 2人がどれほど私のことを見ていてくれて、どれだけ私のことで悩んでくれていたのか、どれだけ心配させていたのか、私は考えられていなかったのです。


 私は、翔くんが居てくれたから、と言いましたがそんなことなんてなかったんです。

 もちろん翔くんが居なかったらここまではなれませんが、もっと、ずっと近くにいたんです。

 翔くん以外にも私のことを見て、私のことを考えて、私のためにここまでお礼を言ってくれる人達が……。


 今ならわかります。

 家で2人から一度も学校のことを質問されなかったことを。

 部屋に出ていた私の趣味が、押し入れに隠されていることだって何も聞かれなかった。

 私自身が質問されたくないことを質問されたことなんてなかった。


 こんな家あるだろうか……。

 こんなにも私のことを考えてくれている家が……家族があるだろうか……。


 何気なく翔くんにありがとうと言ったけど、私がありがとうを言わなきゃいけないのは翔くんだけではない。

 お父さん、お母さんにも言わなくちゃいけないと言うことを私は今更ながら気付かされました。


 気付いた時、私の目の前にはティッシュの箱が置かれました。

 置いたのは翔くんでした。

 なんでだろうと思って顔を触ると私の顔は涙や鼻水でくしゃくしゃでした。


 私は気付かないうちにひどい顔になっていたみたいです。


 ……こんな顔、翔くんには見られたくなかったな。






 顔を拭きながら私は思いました。

 なんで翔くんは何も言わないのでしょうか??

 ずっとお父さんとお母さんは頭を下げているのですけど……そう思っていると


「前から思っていたんですけど……孝宏さんも美咲さんもなぜ僕に礼を言われているんでしょうか。美咲さんにも言いましたが友達になりたくてなったのは僕と美月の意志であってお礼を言われることではありません。実際、美月から全てを話してもらったことはないのでわかりませんが、僕にお礼を言うんじゃなくて美月を褒めるべきだと思います」


 はっきりとお礼を断り翔くんはお父さんとお母さんの顔を上げさせました。


「とりあえず僕の話よりも先に美月から何か話したいことがあるみたいですよ。聞いてあげてください」


 そう言って翔くんは私にバトンを渡して来ました。

 時々私は翔くんが怖いと思う時があります。

 どんな空気を読んだらそんな答えが導き出せるのかと……。

 私は翔くんにそんなことを言った覚えはありませんでした。


「そうなのか……美月」


 先程まで黙っていたお父さんから質問をされました。

 確かに話したいと言うか言いたいことはありましたが、まだなんて言うか決まっても……


「美月は僕にありがとうって言ったけど、言う相手が違うと思うよ。僕のお父さん、お母さんはここまではしてくれないよ。まぁいないことが多いからわからないけどね」


 これなのかもしれません。

 翔くんにあってみんなにないものって……。

 私が翔くんが良いってなるのは……。


「そうだね。翔くんだけに言うべきじゃないね。お父さんお母さんあのね……」


 2人がこちらを無言で見つめて来ます。

 こんなにしっかり2人の顔を見たのは久しぶりな気がします。

 私と同じ色をした髪の毛と目を持つお父さん。

 私と同じ顔のパーツを持つお母さん。

 当たり前ですが2人とも私のお父さん、お母さんです。


「私ずっと1人で悩んで来たと思ってた。そして、翔くんに出会ったからこの悩みを解決出来たのだと思ってた。でもね、確かに翔くんのお陰で高校生活が楽しくなったけど一番近くで支えてくれていたのはお父さんやお母さんだったんだなって今更ながらに気付けたの……。

 本当にずっと気を使わせてごめんね。ずっと自分勝手でごめんね。こんな娘でごめ……"コツン"……あ、いた……」


 まさかの私の言葉は翔くんの軽いチョップに寄って遮られてしまいました。


「あ、やば……つい美香にやる時みたいにしちゃった」


 何も考えずにやってしまったみたいです。

 なんかこう言うSな翔くんちょっと興奮しますが、今はそれどころではありません。


「翔くんどうして邪魔したの……」


 そう、今は邪魔したことを問い詰めなければいけないのです。


「いや、なんで謝ってるのかなって思って。美月が伝えたいことはそんな謝罪じゃないでしょって思ったらなんか美香に叱るみたいにチョップしてたわごめん……」


「あ……」


 翔くんから言われて私は気付きました。

 お礼を言いたかったのに結局私は2人に謝っていると、伝え方はあれだけど助かりました。


「そうだよね。お父さん、お母さん、それでね……近くで支えてくれていたのがお父さん、お母さんって気付いた時にねとても嬉しかった。

 こうやって今、大好きな翔くんと一緒に居れるのは、お父さんとお母さんが居てくれたからだと思うよ……」


「お、おい美月……それは内緒なんじゃん」

「あらあら……美月ったら大胆になったわね……」

「え?!?今……大って……大って……言った……」


 3人から色々な言葉が聴こえて来ますが今の私には、お父さんとお母さんにありがとうを伝える事に精一杯でそれ以外、頭にありません。



「だからね!お父さん、お母さん本当にありがとう!!」



 最大限の笑顔で私はお礼を言いました。







「う、うん。とても良いお礼だったよ美月……」

「そんなことよりも翔斗くんが放心状態よ……」

「美月……僕のこ……大す……だなんて……」


 それなのに3人の反応が思っていたのと違います。

 私が頭の上に「?」を浮かべていると、お母さんが私の耳元であることを伝えてくれました。


「美月、あなたさっき私たちにお礼を言った時、流れで翔くんの事大好きって言ってたわよ……」


 ………………………………え?!?!

 一瞬何を言っているのかわかりませんでした。


 よく自分の言ったことを思い返してみると、

………………確かに私は翔くんの目の前で翔くんのことを大好きと言ってしまったみたいです。




 私はゆっくりと席を立ち上がります。

 黙ってリビングの出入り口に向かいます。

 未だ何も言わず放心状態の翔くんは放っておいて一旦私は自分の部屋に逃げようと思います。


「お、おい美月どこへ行くんだ」


「うるさい!!一回1人にさせて」


 そう言って私は全速力で部屋までの道のりを走りました。


 私は親にお礼を言うつもりが翔くんに愛の告白??をしてしまったみたいです。




 …………本当にどうしよう。

 部屋に戻るなり私はベットに潜り、どうやったらラプラスの悪魔になれるだろうと必死に考えるのであった。


___________________________________________

95話読んで頂きありがとうございます!


大変お騒がせ致しました。

体調も良くなりましたので今日から再開させて頂きます!

また読んで頂けたら嬉しいです。


風邪を拗らせている間に総合PV24万を超えていました!!

いや、とても嬉しいことですね!!

ありがとうございます。


近況ノートにコメントしてくださった方ありがとうございました!

申し訳ないなと思いながら直すのを最優先させて頂きました。


コメント、応援、お待ちしております!


小説のフォロー、レビュー、して頂けたら嬉しいです。


よろしくお願い致します!











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