夜光視点
第93話 1月25日 カップルみたいですね
「わかったから……そんな顔で見つめないで」
お父さんは私からの言葉を聞いて、一度大きく深呼吸から改めて質問をしてきました。
「ごめん、ごめん。まずは名前から教えてくれないか?」
まぁ、名前ぐらいなら……。
「古巻翔……斗くん」
いつもの癖で翔くんと呼びそうになってしまいました……危ない、危ない。
「古巻……古巻??どこかで聞いたことがある気がするが、まぁいい。それで古巻くんとはどう言った関係なんだい?」
関係と言ってもまだ何もありません。
素直に伝えて信じてくれるかわかりませんが……
「関係と言ってもまだ友達だよ」
「まだ、と言うことは付き合う予定でもあるのか?」
「付き合いたいと私は思ってる」
「ほぅ……古巻くんは違うと言いたいのかい?こんなに可愛い娘に好意を抱かれて起きながら娘を選ばないとは」
「ちょっとあなた、そう言う風に言うのはやめて頂戴。翔斗くんはとても美月を大事にしてくれているのよ」
お父さんの言葉を聞いてお母さんがすぐにフォローをしてくれます。
「と言うより、先程から思ってたけどなんで美咲が古巻くんを下の名前で呼ぶんだ?」
「え?だって会ったことがあるもの。顔はカッコよかったしとても美月と仲良くしてくれていたから私がお礼を言うくらいだったわ」
お母さん……絶対余計なこと言ってるよ。
「なに?会ったことがある?どう言うことだそれは」
ほら、食い付いてきました。
一旦話を戻すことにします。
「それよりもお父さん聞いて欲しいの」
私から声がかけられたことによりお父さんの注目がお母さんから私に移る。
「うん……どうした」
私から真剣な話だと察したのか、お父さんは少し姿勢を正した。
「私はね高校で翔斗くんと出会うまで心から友達だと思える人はいなかったの」
初めて私から話すことです。
お母さんも少しだけ驚いた表情をしています。
「私に近寄ってくる子は多いのに大体の人は私の外観、クラスでの位置付けの為に近寄ってくる人がほとんどでそれに気付いたのは中学一年生の時。
その時からは、それでも一人になりたくないから、周りに合わせることだけを意識して学校生活を送るようになってた」
話を聞いたお父さんは言葉を失っているし、お母さんは大体想像ついていたみたいだけど少し泣きそうになっています。
そんな2人を見ると、とても辛い気持ちになります。
「高校生に入ってもこれは変わらないと思ってた。周りに合わせて形だけ友達でいて終わるのかなって……。
そんな時、出会ったのが同じクラスの翔斗くん。
最初に翔斗くんを見た時、私はとても真っ直ぐな人だと思った。
自己紹介の時に、自分の好きなことを堂々と話していたから。
自分の意見を貫ける翔斗くんは、私にはとてもかっこよく思えて、友達になれたら変われるんじゃないかなって思ったの」
一度話を区切って2人を見ると、何も言わずに頷いてくれました。
「でもね、友達にはなれなかった。
翔斗くんには彼女がいて女子とは距離を置いてたみたいだったから。
そんな中、6月頃にたまたま翔斗くんと2人で話す機会があったの。
ここがチャンスだと思ったから、私は翔斗くんに質問をしたの、どうしてそんなに自分の意見を言えるの?って……。
翔斗くんからは、なんで自分の意見を言えないのって逆に聞かれて、私は自分の意見を言ったら友達が離れていっちゃうからとしか言えなかった。
実際そうだと思っていたし……。
でも、翔斗くんは違った、自分の意見を言って離れていく友達なんて友達ではないでしょうって言ってきたの。
その時からだと思う。
私と違う考えを持っていて、自分の意見を言える翔斗くんをカッコいいと思い、意識するようになったのは……」
私の恋バナを親に聞かせてるなんて本当に恥ずかしいです。
「そんなことがあったんだな……どんな理由であれ古巻くんにはお礼を言わなくてはいけないな。もう今から家に呼んでしまいなさい」
「「え?」」
お父さんの提案に私とお母さんは思わず声を合わせて驚いてしまいました。
「ダメなのか?今日は別に予定はないだろう?聞くだけ聞いてみればいいじゃないか」
私の顔を見てくるお父さん。
お母さんの顔を見ると、こう言うところが似てるのよと言わんばかりの顔をしています。
「でも……」
お父さんはわかっていないんです。
親に好きな人を紹介すると言うことがどれだけ恥ずかしいことかを……
「無理なら私が古巻くんに……」
「わかった、わかったから今電話するから」
お父さんが会いに行くとか言いそうだったので、もう翔くんには申し訳ないですが頼むことにします。
「って言うことがあったの……」
「そうなのか。それは……大変だったね」
家から100mほど離れた場所で翔くんと合流した私は、私が翔くんのことを好きと言ったところ以外を全て伝えることにしました。
「じゃー行きますか!」
「そうだね……なんか緊張するんだけど」
「緊張……してくれるんですか?」
「え?するに決まってるじゃん」
決まってるんですね……。
翔くんにそう思って、もらえてるだけで私は幸せな気持ちになります。
「そうだよね。じゃー今度こそ行こう」
「いざ!美月の家へ」
翔くんの言葉で私と翔くんは家に向けて歩き出しました。
なんとなく、私は翔くんの手を握ります。
「ん?美月?どうして手を?」
「緊張してるんですよね?私のせいですし任せてください」
「これは拒否できないやつだね……」
そう言って翔くんの方からも握り返してくれます。
まるで、カップルみたいですね。
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93話読んで頂きありがとうございます!
ついに翔斗と夜ちゃんのお父さんがご対面ですね。
一体どんな会話をするのか楽しみですね。
コメント、応援いつもありがとうございます。
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