夜光視点
第35話 10月14日 古巻くんと話したいなぁ〜
私は今、とても混乱していました。
まさか……あの朝露さんが立候補してくるとは思わなかったから。
何故、朝露さんが立候補したのだろうか……
私はその疑問で頭がいっぱいになります。
すると、一瞬ではありますが朝露さんと目が合いました。私は気付きました。
朝露さんも私と同じなのだと。
古巻くんと一緒に文化祭実行委員がしたいのだと気づいてしまいました。
私は心の中でため息を付きます。
よりによって何故あの2人なのかと……
何故私が色んな意味でも意識してしまっているあの2人なのかと……
そして私は思ってしまったんです。
朝露さんの目を見て思ってしまったんです……
朝露さんは私よりもやりたい気持ちが強い……と。
本当は意地を張ってでもやるべきなんだと思います。
ですが……気持ちで私は負けてしまいました。
本当はそうじゃないかもしれないけどそう思ってしまいました。
だから……
「あ……朝露さんがやってくれるなら私は大丈夫です……」
思ってもいないのに口に出してしまいました……
私は今玄関の前にいます。
本当は遊びに誘われていたのですが、流石に断りました。そんな気分にはなれなかったからです。
「ただいま……」
「あらおかえりなさい」
「おかえり」
家に入り、リビングにいた両親に声をかけると私は二階の自室に向けて階段を登ります。
「美月?なんか学校であったのか??」
階段を登っていると、リビングからひょっこり顔を出した父から声をかけられました。
「うんん……何もないよ。疲れただけ」
「そうか……」
それだけ言うと私は部屋に入りました。
私の部屋はある一部分を除いてはごく平凡な部屋だと思っています。
今まではずっと隠してきたその一部は、古巻くんと話したあの日から堂々と見せるようになりました。
まだ自分の部屋だけではありますが。
私は彼のお陰で少し変われた、そう感じています。
だからこそやっぱり後悔しています。
あの時辞退していなければと……
多分あのままいけばクラスの投票で決めていたので、間違いなく私が選ばれていたと思います。
ですが私自身が友達だと思っていない人から手を借りることがどうしても嫌でした。
でも、いつまでも落ち込んでいるわけにはいきません。落ち込んでいる間にも出来ることがあると思ったから。
だから私は机の引き出しから一冊の本を取り出しました。
最近古巻くんに対しての気持ちに気がついてから、少しでも古巻くんのことを知ろうと思い、購入した本でした。
その本の名前は略称で「青○た」と呼ばれていました。何故この本を取ったのかは自分にもわかりませんが……独特な名前に惹かれたのです。
ここ最近少しずつ空いている時間で読むようにしています。一気に読まないあたりまだハマってはいないのだろうなと思いますが……
ですがあの古巻くんが好きだと思ったものならば、何故好きなのか知りたいと思ったんです。
今日は失敗してしまった。だけど、次のチャンスはしっかりいかしたい。
そう思った私は部屋から顔を出して、お母さんに
「今日はご飯いらない」
そう伝えて、本を読み始めました。
本を読み終わり時計を見ると、もう22時を超えていました。
本を読んで思ったことは、なんで今まで読んでこなかったのだろう。その一言でした。
私は本を読む中で何回も笑い、何回も泣き、何回も共感しました。それだけでも私が送っている学校生活にはないことでした。読んでいくにつれ私はどんどん感情移入していきます。少しばかり私と重なる点があったから。
私自身が過ごしたいと思う学校生活が描かれてはいないけれどもなぜか羨ましいと思ってしまいました。
そして、この話に出てくる学校生活は朝露さんに似ているとも思いました。
それを私は羨ましいと感じたのです。
あの時は否定したのに……
私は思いました。ここでも古巻くんは私を変えてくれた、と。
本を読まない私に本を読ませてくれたこと。
この間まで否定していた考えを少しだけ良いかもと思わせてくれた。
全然、直接的なことではないけれども、古巻くんから始まっていることに私はとても嬉しくなりました。
明日続きを買いに行こう。
そして、この文化祭で一言だけでも古巻くんと話そう。私はそう決めました。
だって、この本の中の青年は、全校生徒の前で告白すらしていたから。
それに比べたら私がしようとしていることなんて、簡単なことだと思えました。心が軽くなった気がしました。
ここでも古巻くんから助けてもらえている気がして私は幸せな気分になりました。
そして私はやっぱり古巻くんのことが好きだと思いました。いや、大好きなんだと思います。
最近は毎日のように古巻くんのことを考えてしまいますし、毎日声をかけようかと思っています。ですが、まだ一回しか話していません。
私はあれから一歩も古巻くんと距離を縮められていないんです。
古巻くんと話したいなぁ〜
そう私は呟いてやっぱりご飯を食べようとリビングに向かうのでした。
___________________________________________
35話読んで頂きありがとうございます。
夜ちゃんもほんとにいい子だよな。
翔斗は罪な人だよ。
昨日は初めて1日6000PV超えました。すごいなぁ〜って見てましたけど本当にありがたい。
ありがとうございます。
誤字脱字、感想などのコメントありがとうございます!まだまだ送って頂いて構いませんのでどんどん送ってください!
レビューや小説のフォロー、応援なども本当に励みになっています。ありがとうございます。
これからもよろしくお願いいたします。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます