夜光視点

第29話  10月14日 まさかの朝露さんでした。

     私の名前は夜光美月。

学校では学年で一番可愛いと言われています。

ですが、嬉しくはありません。

人よりも外見はいいと思います。お婆ちゃんがスウェーデンと日本人のハーフだったこともあり、金髪で目が水色ですし、顔もそれなりに整っていますから。


私には沢山の友達がいます。正直に言うと上辺だけの友達です。もともと明るい性格だったこともあり、私の周りにはよく人が集まります。そしていつの間にか友達になっています。毎日毎日私の周りに人が集まっては、私のご機嫌を取るようなことをします。内心ではほんとにうんざりしています。ですが言えません。なぜなら私は臆病だから、1人になることが怖いから。


そう思い始めたのは中学1年生くらいの時でした。その頃の私は、とても純粋な子だったと思います。みんな私のところに集まってくれるのは、私と友達になりたいから、私のことが好きだと思ってくれているから。本当にそう信じていました。


ある時私が可愛いと言ったものを、「私もそう思う」と周りの子が言ってくれた時がありました。

その時はとても嬉しかったのを覚えています。

ですが、次の日、その子たちが集まっていたので声をかけようと近くに行きました。すると……

「美月はなんであんなの可愛いと思うのかね?全然センスなくね?」そう話しているのを聞いてしまったんです。さらに、「美月が何か言うとそれに乗ってあげなきゃいけないからだるいよね〜」、「うんうん、私たち別に美月と一緒にいることだけが目的なのに」

……それを聞いて私は理解してしまいました。私の周りにいるのは、私と友達でいるわけではなく、私の容姿と友達でいるだけだと。

その瞬間私は怒りが込み上げてくるのを感じました。


「なんで、そんなこと言うの!!私普通に可愛いって言っただけなのに!可愛くないと思うなら可愛くないって言えばよかったじゃん」


初めてでした。生まれて初めて私はこんなに大きな声を出しました。

そして、これだけ私は自分の気持ちを伝えたんだ、絶対わかってくれて、謝ってくれて、ちゃんと友達として今度からはやっていけると思っていました。


ですが……


「なにそれ、勘違いしないでよ。あくまで私たちは、あなたと居れば必然とクラスの中心に入れるからいただけだから」


そう、言われてしまいました。


その日から私には友達がいなくなりました。

今まで楽しく過ごしていた学校生活は私が思っていることを言ってしまったばかりに、寂しいものとなってしまったんです。


そこから私は学びました。

1人になって寂しい思いをするなら自分の気持ちなんて我慢すればいいと……


だから、中学2年生からは自分の意見を言わず周りに合わせるようにしました。

すると周りの人たちは私のご機嫌を取るようになったのです。「これ可愛いよね美月ちゃん」「最近できたカフェがめっちゃ人気でさ今度行こうよ」

当たり障りのない会話をされます。

その全てに「そうですね」「あ、それ私も行きたいと思ってました」と答えます。そんなこと思ってないのに。自分の意見を言ったら1人になってしまうから。


私が周りに合わせるようになってから1年ほど経つと私の中ではこう言う関係こそが、友達と言うのだろうと思い始めていました。相手の顔を伺い、相手に合わせるそれこそが友達だとそう言い聞かせるようになりました。



1人になりたくないから、友達がいなと寂しいから、自分の意見を言わなくなり、私の容姿だけが必要で近寄ってくる人たちと仲良くする哀れな私。


今の夜光美月が出来上がりました。





私は中学を卒業し、常磐高校に入学しました。

そして、出会いました。2人の人物に。


最初に出会った人物は朝露凪。入学早々彼女は学年で一番の美少女だと言われていました。


だから少し、嬉しかったんです。私と同じ人が来たと思って。同じ境遇の人なら本当の友達になれるのではないかと思って。

ですが彼女は違いました。

私とは違い誰一人相手にせず、友達を作ろうとはしませんでした。

彼女は強い、そう思いました。私が恐れて、選択できなかったことを彼女は選択し実際行っているからです。

そこで気がつきました。今の私が彼女と同じなわけがないと……友達になりたいなんて思っていいはずがないと……

私は朝露凪に声をかけるのをやめました。



次に私が出会った人は、自己紹介の時でした。

その子の名前は古巻翔斗。


古巻くんは、自己紹介で言いました。


「趣味はラノベ・マンガを読むことです」と。


そう言った瞬間周りはクスクス笑い始めました。

ですが古巻くんは全く気にせずそのあとも自己紹介を続けたのです。


私はそれを見て、心が高鳴ったのを感じました。

なぜなら、彼は自分の意見をしっかり他の人に伝えていたからです。

私が恐れてできなくなったことを彼は堂々と私の前で行ったのです。

私は先程の朝露さんみたいに、友達になりたいと思いました。この人と友達になれれば本音を言い合える友達ができると思ったから。ですが、それすらもできなくなりました。古巻くんには彼女がいて、全く女子と仲良くなろうとしなかったから。そしてその姿勢が私には大きな壁に見えてしまい、話しかけることすらできなくなりました。自ら自分の意見を言わなくてなった私がなんで古巻くんに話しかけることができるのか、私はそう思ってしまったのです。


私は結局、2人と友達にはなれず、他の大勢と友達になりました。


どんどん私はなりたかった自分から遠ざかっていきます。どんどん心が汚れていくのを感じました。



高校生になってから2ヶ月が経った6月の頃。

私は、放課後の教室に残っていたことがありました。

一番後ろの席でなにも考えず、窓から差し込むオレンジ色の光と黒板を私は眺めていました。


すると1人の男子が入ってきました。その男子とは入学した時に心から友達になりたいと思った古巻くんでした。



「忘れ物……っと、うわぁ!びっくりした。ごめん。まさか夜光さんがいると思ってなくて独り言言っちゃってた」


それが古巻くんが初めて私にかけてくれた言葉でした。


「いえいえ、大丈夫だよ。なに忘れたの?」


私はもともとこんな話し方はしないのですが、いつのまにか友達と話すとこの口調になっていました。


「あーお弁当箱だよ……あったあった

じゃなくて、夜光さんなにしてるの1人で?」


まさか質問されると思っていなくて、私は咄嗟に悩んでることを言いそうになりました。ですが、それを我慢して私は嘘を付きます。


「友達を待ってるんだよ。部活終わったら遊びに行く約束だから」


「そうなんだ……じゃー僕は帰るね。また明日」


古巻くんは私には全く興味を示さず帰ろうとしました。

それを私はいつのまにか止めていました。


「待って……」


「ん??どうしたの夜光さん」


私は止めたくせになにを話せばいいかわからなくなりました。でもここで効かないと私はずっとこのままだと思いました。それは嫌でした。だから……私は昔の口調に戻して質問しました。


「質問があるんです。聞いてくれませんか?」


すると……


「まーいいよ。少しだけね」


そう言って私の席の前まで来て座ってくれました。顔はとても嫌そうでしたが……


「で、なに?質問って」


「どうして古巻くんはそんな自分の意見をしっかり言えるんですか??」


「ん?唐突だね……意識したことないからな〜〜。逆に夜光さんはいつも自分の意見言ってないの?」


質問したのは私なのに逆に質問されてしまいました。


「そう……ですね。言ってないかもしれません。言ったら周りの人が離れて行く気がするんです」


余計なことまで言ってしまった……


「それで離れていく人なんて友達じゃないでしょ」


古巻くんからそんなこと言われてしまいました。たしかにそうだと昔の私なら言っていると思います。

ですが今はそれがいかに怖いことか知っています。


「でも、そのせいで周りから全員いなくなってしまったら??」


「いなくなってしまったら……それならそれで僕はいいかな。だってそんなの友達じゃないから。全員いなくなったのなら、また1から友達を作り直すし。今度はもっと自分の意見を言って僕のことをわかってくれる良い友達を作るよ」


真っ直ぐな言葉だと思った。やっぱり私は古巻くんと友達になりたいと思いました。ですがそれは無理です。なぜなら今も彼からは距離を感じるからです。


「あの、最後の質問です。これ……可愛いと思いますか?私は可愛いと思うんですけど」


「ん?これ?……プッ、あはは!なにこれ、全然可愛くないじゃん。面白い趣味してるんだね夜光さんって」


ものすごく笑われました。可愛くないと言われものすごく笑われました。ですが全然嫌な思いはしませんでした。

その日はそれで古巻くんとは別れました。


次の日、古巻くんと話すことはありません。やっぱり壁は未だに存在はします。ですが私の中では古巻くんのことが気になって何かと見るようになりました。また話がしたいそう思うようになりました。


あの日から私の中で古巻くんは特別な存在になった気がしました。だって私の中では初めて素直に意見を言ってくれた人だったから……


そして10月に入った時、私にとっては嬉しいことが起きました。古巻くんが彼女さんと別れたらしいのです。これはチャンスだと思いました。また古巻くんと話すことができるとそう思いました。



そして、その頃には


私は古巻くんのことを好きになっていました。




今日は10月14日です。

私はいつも通りに学校に行き。いつも通りみんなに合わせて話をします。先生が来たら真面目に話を聞き、先生が文化祭の実行委員を決めると言った時も周りに合わせて、「え〜」と言います。


どうせ私はやらないからそう思っていました。

ですが、やらなくてはいけなくなりました。


なぜなら、


「僕、暇なんでやりますよ」


そう言ってやりたく無さそうに手をあげていったのが古巻くんだったからです。


私はここだと思いました。これなら話すことができる。そう思いました。だから私は手をあげて言いました。


「「なら、私が……え?」」


私だけだと思っていたらまさかもう1人いました。



その相手は……

     


     まさかの朝露さんでした。


___________________________________________

29話読んで頂きありがとうございます。


今回は夜光視点での話になっています。

予想以上に長くなってしまいましたが、、

内容が崩れていないか心配です。

なので簡単に夜光さんのことを説明します。


夜光さんは朝露さんが別の選択をしたときの姿です。


はい!簡単!

もし本文読んでも伝わらなかった人は、

申し訳ありませんが、これを踏まえて読んで頂きたいです。よろしくお願いします。


それでも伝わらない場合は、もうコメント欄で下手くそと罵ってください!お待ちしております。


誤字脱字報告、感想などのコメントほんとにありがとうございます!

もっともっとお待ちしております。誤字脱字はなくせるように努力します、、、


レビュー、小説フォロー、応援などもほんとにありがとうございます!とても励みになっております。あとは、レビューにもなんかコメントしてくれても、、いえ、なんでもありません!

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