(Q):異世界転生したら神以上に強くなってしまったんだが?

「ノア!」

〔了解。魔力充填完了〕

「”碧落の極致、究極の終焉”――! 《虚空ソラ》!」


 ――僕が魔法を放った瞬間。視界は真っ白に染まった。


「…………はぁ…………はぁ…………はぁ…………よし。これで死んでなかったらもうやばいぞ……」

 僕の魔力は膨大だ。世界中の全生物でも五本の指に入るくらいだろう。

 なのにその魔力が全てなくなるほどの威力の魔術だった。

 魔力は無限に回復するが、それでも数秒しないと回復しないほどだ。

 どんだけの威力なんだよこれ……

 それに使った反動で身体的疲労がすごい。倦怠感が……


「お、もうそろそろ霧が晴れるぞ……!」

「複雑な気持ちじゃが……どうにか死んでいてもらいたいものじゃ……」

 数秒後、完全に霧が晴れるとそこには――


「真っ白い……なんだこれは?」

 魔法の範囲に含まれていたであろう場所が白く状態になっていた。


「た、試しに触れてみますね……」

「ご、ご主人様っ! 危ないかもしれないのじゃぞ!」

「大丈夫さ。僕ならなんとかなるよ」

「くっ……そう言われたらどうしようもないんじゃが……」

 サクをなだめ、その白い状態の場所に触れてみる。


「ん……? 硬いような……そもそも空間がないような……」

「どういうことじゃ?」

「なんか……みたいなんだよね……」

「お? ちょっと俺にも触らせてくれないか?」

「あっ……気をつけてくださいね……何を気をつければいいかわからないけど……」

 色を説明しようとしても、白、もしくは無、としか言いようがない。

 そして触れても、触れてるのかすら曖昧だ。

 硬いような、そもそも触れてないのか。

 すごく説明が難しい状態になっている。

 ――そんな事を考えている間にオリジックさんは壁?に到達していた。


「う~ん……ソラくんの説明がいかに正しいかわかった気がするね。

{超越時空}復時鑑定タイムリヴァイヴ・アプレイザル》! ……なるほどねぇ……」

「オリジックさん! 今何の魔法を使ったんですか?」

「あぁ。いまのは鑑定魔法の亜種でね。対象の物質の過去を遡ってその物質がどんなものかを鑑定できる魔法だよ。今回は君が魔法を使った直後に遡った」

「なるほど……! それで、どんな結果だったんですか?」

「どうやら、これは本当に空間がないみたいだ。過去に一度空間がない場所を視たことがあるからね……それでわかったよ。すごいな、まさか空間というほぼ絶対的なものすら破壊する魔法なんて……」

「あ、ありがとうございます……? ……正直僕も驚いてます。なにせ初めて使った魔術ですから……。こんな魔術だとは思ってもなかったですよ」

「なるほど。……しかしこれ、はたして直るのか? 結局あのときも空間の復元は無理だったしな……」

「いやぁ。それなら大丈夫だよ。僕がなんとかする」

「「誰だっ!?」」

 何気ない会話の最中、突然の闖入者ちんにゅうしゃに僕とオリジックさんが後ろに跳び、警戒する態勢をとる。

 僕がその闖入者の声がした方向をと、そこには見覚えのある人――正確には人じゃないのだが――がいた。


「あなたは……! 《多元存在アカシックレコード》さん!? どうしてこんなところに!?」

「アカシックレコード!? ソラくん……なぜ君が知ってる!? それに知り合いか!? どういうことなんだ!?」

「まぁまぁ。一回落ち着いてよ、オリジック・ロノバース。いや、

 ”オリジック・・ロノバース”?」

「なっ、なぜそれをっ!? …………もしや、『アカシックレコード』だから、か……?」

「正解だ。僕こそが、この世界、宇宙の全てを、

 森羅万象を記録、管理せし絶対存在。《多元存在アカシックレコード》さ」

「な、なぜ《多元存在アカシックレコード》様がこんなところに……?」

「う~ん……その説明は後でいいかい? とりあえずこの空間をもとに戻さないとね。《空間よ、戻れ》」

多元存在アカシックレコード》がそういうと、真っ白の場所がみるみる色を、空間を取り戻していく。

 ――――空間がない場所に空間が戻ったらどうなるか。

 前世の記憶があれば、いやなくても、知識があれば普通にわかる。


「きゃぁっ! か、風がすごいのじゃっ!」

「そうなると思ったよっ!《風流同化ウィンド・アシミレーション二重起動ダブルキャスト!」

「《風流同化ウィンド・アシミレーション》!」

 そりゃあ、空間がない、つまりは空気もない。

 真空状態の空間に空気が流れ込むわけだ。

多元存在アカシックレコード》め……

 扱いが雑……


「ご、ご主人様ぁ~……助かったのじゃ~……」

「おいおいソラくん……咄嗟の事とはいえ俺もその魔法で巻き込んでほしかったよ……まあ怒ってるわけじゃないけどさ」

「うっ……すみません……ま、まぁオリジックさんならどうにかするだろうと思いましたし……」

「そんな落ち込むなよ? 俺まで悪い気分になるから」

「はい……大丈夫です。…………さて……《多元存在アカシックレコード》さん? 放置して悪かったですねぇ? お話を聞かせてもらいましょうか?」

「ソ、ソラくん……そんなに怒らなくてもいいじゃないか……ちゃんと説明するから……!」

「とりあえずさっさと荒れ果てた周りを綺麗にしてくださいね? あなたなら一瞬でしょう?」

「わかった、わかったから! 《大地よ、美しくあれ》」

 次に《多元存在アカシックレコード》がそう唱えると、突然大地が隆起しはじめた。

 へこんでいたり盛り上がっていた場所は平らになり、

 草花が異様な速度で生え始めた。

 その数秒後には美しい花畑のような様へと変貌していた。

 ここで大規模な戦闘があったなんて言っても信憑性皆無だろう。


「よし。これでいいよね?」

「えぇもちろん。ではお話を聞かせてもらいましょう。ささ、早く早く」

「ちょっ、ちょっと待ってくれよ! ま、まずソラくん! なんで《多元存在アカシックレコード》様がここにいらっしゃるんだ!?」

「えっ……それ僕に聞かれても困るんですが……《多元存在アカシックレコード》に聞けば良いんじゃないですか?」

「もう僕から説明するよ……。僕こと《多元存在アカシックレコード》がなんでここにいるのか。それはさ。――――ソラくん。君に悪いお知らせと良いお知らせがあるんだよ。それを伝えに来た」

「ほぉ? ……ほんとあなたいつも突然ですよねぇ……じゃあ悪いお知らせから聞かせてください」

「悪いお知らせ。それはね、

 使。この世界にんだ。

 僕の想定するよりずっと早く。僕の対策を打ち破って」

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