第20話:サクとノア、それと権限。

 そして翌日。

「ふう……朝か。今日は邪神を討伐する日だな。【システム起動】」

〔起動。降臨推測地周辺に感知結界を仕掛けました。感知後転移します〕

「よし。それまでどうしよっかn……あ、サク」

 サクの存在を忘れていた僕は亜空の中へ行くことにした。

 そして入った瞬間……


「うわああ!! 危なぁ!!」

 紫のビームが空から、奥からこちらに1の字のように放たれた。


「ご主人よ! 我を放って何してたんじゃぁ!」

 正直ちょっと可愛い。


「い、いやぁ、邪神降臨とかいう話があってね? それで忙しかったんだよ。うん」


「な。なに!? 邪神が!? それは大変じゃのぉ……」


「そういえばサクって邪龍だよね。邪神と関係あるの?」


「邪神はわかりやすく言えば我の祖母じゃの」


「え!? そうなのか!」

(彼はスキルを使えば何でもわかることを忘れています)


「そうじゃ。邪神龍が我の母で、その子が我じゃの。でも邪の精神は従魔になって消えてしまったぞ。種族どうなっとるのかはわからんのじゃがな」


「え、ステータスは?」


「むぅ? なんじゃ?それは」


「え? マジかぁ……んー、(WSWorld System、どうすればいい?)」


〔邪龍サクヴィリュートの権限を確認……ステータス閲覧権限が剥奪されていた模様。マスターが従魔にしたため権限付与はシステムからマスターに移行しています〕


「お、そうなのか。じゃあ

 Add{権限付与、ステータス閲覧。対象サクヴィリュート。}

 これでいいんじゃないか? ステータス、とか言えば見れると思うよ」


「本当か?ん、ステータス。

 本当じゃ! えーっと?種族が……

 聖邪龍になっとるの。なんじゃこれ?」


「聖邪龍って……矛盾してるじゃん……まあステータスを見れるようになってよかったな」


「そうじゃな!」


〔というかマスター。私のことをいちいちスキル名で呼ぶのは非効率的です。

 名前をつけてください〕


「え? え……じゃあノアで」


〔随分あっさり決めますね。まあいいです。これから私は〈魂核エルピス〉ノアとなります。改めてよろしくお願いしますよ。マスター。〕


「ああ。よろしく」


「ご主人は何と話しておるのじゃ?」


「ん~、エルピス、かな?」


「なにか聞き覚えがあるのぉ……まあよいか。ところでご主人。

 邪神戦、我もついていってよいかの?」


「ん? まあいいぞ? でもいちいち面倒見てられるかわからないからな?強さがどれだけか分からないし」


〔マスター。邪神なぞ今のマスターの全力を使えば同時に10万柱いても10秒で殲滅できます。さらに私が最大限の権限で生み出した

碧落極致プロヴィデンス》を使えば1秒で殲滅可能です。〕


「お、おお。とにかくすごいんだな」


〔試しに発動してみますか?亜空なら大丈夫ですよ。修復は魔力で行えます〕


 その言い方はやれと言ってるんだよなぁ……


「ま、まあやってみるよ。

 サク。危ないから避難していて」

 そう言って多次元結界を作る。


「ん? 何をするんじゃ?」


「いや、今から邪神を倒すための魔法を使ってみようかと思って」


「わかった。ここで見ておるからな!」


「よし。

 ふぅ……..

碧落極致プロヴィデンス》」


 詠唱と同時に魔力を思いっきり込める。

 勿論、スキル:無限の力 は最大出力で開放している。

 1秒も経たないうちに魔法陣が形成され、発動する。


 刹那、視界が真っ白になる。


 直後、腹の底まで響くような重低音が聞こえたと思った瞬間音が消える。


 魔法の発動が終わって、視界が開ける。


 視界が鮮明になった瞬間飛び込んできた景色は想像を絶するものだった。



「なんだよ……これ……何も……ない…….」


 ノアによると、

 亜空の地図があったとして、僕がいるところが中心とする。

 僕の目の前から1m離れたところから先は「なにもない」のだ。

 それが横に一直線に続いている。

 ■の上半分が完璧に消失しているのだ。


「ご、ご主人……なんじゃこれは……?」


「わからん……強いて言うなら最大限の力を使って放った魔法って感じ……かな……」


「……ご主人……強すぎないか……?」


「僕ってこんなに強かったか……?」


〔マスターはこれくらい最初から強いです。

 とうかノアの能力をもっと使えば強くなれますよ?〕


 え。そうなのか。いやそうだったな……

 でもまだいいか……これ以上やると手加減できかねん。

 あ、そうだ。手加減するスキルでも今度作るか……


 とか考えていたとき。


(ん!?この感じは……感知結界か。オリジックさん来たのか)


「さ、さて。邪神討伐に行こうか!」


「そ、そうじゃの!」


 という感じで無理やり話題を変えるように

 サクと皇子と会った場所へ転移した。

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