第9話

メッセージ送信のボタンを押す時、私の胸は一際大きく高鳴った。



ふと時計を見ると時刻は二十二時半を少し過ぎたところだった。



私は、しまったと思った。



先程、優斗さんに送ったメッセージは丁寧にを意識して書いたけれどこんな時間なのだから、夜分遅くにすみませんの一言でも入れたら良かったかしらと。



いや、入れるべきだった。

ネットを介するとはいえ、その先に居るのは生身の人と人なのだから、現実と同じで細やかな気遣いができないようでは駄目だ。

第一印象は大事だ。



少しお話を聞いてみたいです、なんて控えめな物言いでメッセージを送ったけれど、実のところは大きく引っかかる点さえなければ、私はグルチャに参加する気満々だ。



そんなことを頭の中でモヤモヤと巡らせているとスマホのランプが青くピカピカ光るのが目に入ってきた。



画面を見ると優斗さんからのメッセージだ。



【理絵さん、はじめまして!

メッセージありがとうございます!

はじめての方、大歓迎ですよ!

不安もあると思うので、何か気になってることはありますか?】



優しい文面に私はホッと安堵した。

ネットの世界だからといって最初から不躾に砕けた話し方をする人でなく、礼儀正しくしっかりしてそうな人だ。

自分の口元が緩むのが分かり、何だか嬉しかった。

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