工事中止命令
今日も完成してない。
学校の帰り道、今日もそのビルを見上げる。
着工からかなりの月日が経ってるのに未だに鉄骨がむき出しのままで工事は中止状態。
再開しては中止を繰り返すもんだから、あそこには何かあるんじゃないかと変な噂が流れるようになった。
でも、そんな再開と中止を繰り返すビルもいつからか私達の日常に溶け込んでいた。
夕日に照らされる鉄骨の柱たちが綺麗でありどこかで不気味さを醸し出していた。
こういった作りかけの建築物は何故か見惚れてしまう。暫く見ていても飽きないくらいだ。
ふと、最上階であろう場所に視線を移す。
人影を見た、気がした。
今はあのビルには誰もいないはず。それに白いワンピース姿と余りにもビルの関係者とは思えない姿に私は何やら不安を感じた。
関係者以外立入禁止の書かれたテープをくぐり、私は鉄骨がむき出しのビルに踏み入れ、ひたすら上の階を目指し階段を上る。
息を切らしながら人影を見た階に辿り着き辺りを探す。
誰もいない。見間違いだったのだろうか。
息を整えながら、景色を見ようと端へと向かう。
眼下に広がる景色を見ていると、後ろから気配を感じた。振り返ると先程の人影だろうか。白いワンピースを着ていて、髪も肌も白い女性が静かにこちらを見つめていた。
女性のか細い人指し指が私のおでこに触れる。
その瞬間、視界いっぱいに銀粉が舞い、私はビルから落ちる。
うまく頭が働かない。
どこかふわふわした状態で、
私、今、落ちてる?
と思ったが不安や恐怖を感じることなく地面にグチャリと落ちた。
救急車とパトカーのサイレンが鳴り響く。
ビルは今日も完成していない。
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