252 鶴の一声を失った

 こんにちは。


 エリザベス女王が崩御されましたね。

 昨晩、医師の管理下に置かれているという報道を知った後、ニュース速報が流れるたびにドキドキしていました。昨晩は豪雨でニュース速報が多くて……。

 数日前に新首相の任命で元気そうなお姿だったので、何がなんやらで……きっと風邪をこじらせたとかで回復されるだろうとも思っていたのですが……二時半ごろだっただろうか。フォロワーさんがお亡くなりになられたという情報を英メディアのツイートをリツイートされていて。それで初めてお亡くなりになられた事を知りました。


 私は、別にイギリスは好きだけれど特別好きってわけでもないし、英国王室もの事も。でもなんだかすごく悲しくて。この悲しさをかみ砕いてみた。


 昔、一度だけ、今の天皇陛下ご夫妻を偶然見たことがあるのです。たまたま駅にいたら、スーツの男性が日本国旗の手旗を配っていて。今からいらっしゃいますがお迎えされますか?と。

 そこまで興味も無かったのだけど、急ぐ用事も無かったので、友達と駅に到着されるご夫妻を待つことにしました。ほどなくして到着された時、今まで知らなかった感覚が芽生えたのを今でも覚えている。この方たちが国民の事を思ってくださっている方なんだなぁと。日本国民でよかったなぁって。本当に不思議な感覚だった。お二人とも優しい笑顔。どこへ行っても、囲まれて歓迎されて大変なんだろうけれど、それを全く感じさせない丁寧なふるまいと自然な笑顔で。お迎えしている人たちの歓声を全て、有り難く掬い取ってくれているような。


 愛されることが仕事であるって、なかなかなストレスだと思うのです。王族やアイドルや著名人もそうなんだと思うけれど、家柄や公に認知されている自分と、自分自身が認知している本当の自分との乖離や、自分の何を知って愛してくれているのか、愛されるに足る人間なのか葛藤は少なからず起こる。「与えていると思っている物」を「贈られる愛」が上回っていると感じた時、相当な自信家やナルシストで無ければ、すごいストレスだと思うのです。

 実際に私も、昔歌の配信をしていたのだけど、リスナーに私に対して幻想を見ている人が出始めて怖くてやらなくなってしまった。私はアイドルでも何でもないし、ここを読んでいる方々は分かると思うけど、ごく普通のメンドクサイ考え方をするただのクズ。それに私を支持してくれても何も返せないし求められても与えることができない。私には何無いから。だから怖かった。私と外から見られる私が同一にならない事が。


 ご夫妻を間近で見る機会があり、目の前をお通りになって。無意識に感じたんだろう。自分が日本と言う国で生きている事を。皇族の方たちが望もうが望むまいが、また、国民が支持しようがしまいが、そういう人たちを背負っている人が目の前にいた。背負っている物や覚悟が違う。その時はそれを言語化できなかったけれど、ただただ胸がいっぱいで大好きになってしまった。目にするまであんなに興味が無かったのに。


 今日、元首相のジョンソンさんが「世界で数えきれないほどの人が予想外の悲しみを感じているでしょう。家族を亡くしたように感じる理由を探しているはず」と言っていたのが私には一番近い言葉だった。

 祖母が亡くなった時にも感じた、もう会えないんだな、という感覚。会ったことが無いのに。私は英語も話せないのに。なのに、悲しくて泣いた。

 事に触れ、世界の惨状にも出過ぎない言葉で心を寄せている事を示し、なんていうか……そういう積み重ねが何となく近い存在に思っていたのかもしれない。世界を背負ってくれていた方なのだな、と。

 

 21歳の若さで「私の生涯が長くとも短くとも、その全てをあなた方と私たちの偉大な英王室に捧げます」と語った決意は尋常じゃない。もっと幼い事から自覚があったそうだし、何回目の人生で、どんな育て方をされたらそんな肝が据わるのか。クリントンさんが「もし王室に生まれなければ、彼女は優れた政治家か外交官になっていた」と言われた話を聞くに、頭が良くて感覚のバランスが優れている方だったのでしょうね。本当に納得です。

 神さまは有るべき場所に必要な人を据えられるのですね。私なんて東の端の国の場末で、小さな声でがなっているだけで。なんてクソなんだろう。そもそも、私が何か世界を動かすような波を起こせるとは思ってはいませんが。本当に女王はすごい。愛され続ける事を容認するという事は、自分の認識とは違う自分を押し付けられて攻撃されることも許容するという事です。


 もう「鶴の一声」は望んでも聴けない。世界は今まで頼り過ぎていたのかもしれない。こういう人が言葉で平和を守ってくれるんだと。知らず知らずのうちに、重責を押し付けていたのだろうな。国は違えど。

 遅いくらいです。もっと早くに楽に自由になってもらってよかったのに。ただのステキなおばあちゃんに。

 小さな声の頭の悪い、なんの拡散力も無いクソだけど、それでも平和を唱えないとな。


 本当に、心からお疲れ様でした。ご冥福をお祈りいたします。



 

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