RICO-君と生きた青春

齋木カズアキ

つかみ。

 君は僕を弄ぶ。直ぐに知ってしまった楽しい遊びを、本能で何度も繰り返す子どものように。

 梨子は突然キスをする。いきなり本気のキス。僕が何かに苛立っている時、精神的に疲れている時、それを察知する。いいおっさんだから当然未経験ではないけれど、僕は滅法キスに弱い。キスが好きだから、感じる部分も、感じさせる方法も研究していた。だからオナニーは、触感を想像しながらキスシーンの映像だけで夢心地にイケる。君はそれを知っているから迷わず僕を襲う。君の甘い吐息と唾液が絡む舌の匂いだけで勃起はクライマックス手前まで一気に突き進む。

 君は手馴れている。胸を押しつけながら進むキスに、顔と上半身を含む右手の動きは集中し、下半身の反応を見逃さない左手は、気づかない間にベルトを外し、ファスナーを下ろし、ジーンズをトランクスと一緒に僕の膝上辺りまで滑り落とす。

 神業としか言いようがない。

 夢心地でいる僕の胸をいきなり両手で突き、梨子はベッドに押し倒す。僕の足は床に投げ出されたまま。膝上に留まる着衣は剥ぎ取られ、下半身は即座に無防備にされる。

 両足の間に割って入る君は、天井を見上げて呆然と光る僕の男性器を口に含ませ弄ぶ。

 君の唇は大きく、ぷっくりと情熱的な厚みを備えている。常人離れしていると友人が揶揄する僕のモノは君の唇の中に時折全てを埋められる。口腔内でうごめく舌が想像もできない動きで絡みつく。僕は快感に呻くしかない。煽情的な唇も別の生き物のように男性器の表面を這い回る。

「ボクが実クンに服従している証よ」

 ボーイッシュな君は、自分をボクと表現するのに言葉の終わりには少女を見せる。

 確かに男性器を含ませる行為は征服欲をかき立てる。

 しかし君の言う服従とは何だ?僕の奴隷?それともぞっこん?

 でも行動はいつでもその逆。そこにあるのは君の意志のみ。

 心の内が分からない。

 けれども、君の施しでその日に溜ったあらゆる淀みは消えているから文句も言えない。

 初めて出会ったあの夜から、おっさんの心を、そして肉体をふり回すこの小悪魔から、自らの意志では決して離れられない。そう感じていた。

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