俺は空気が読める~魔力0の無能だと馬鹿にされてダンジョンに追放された俺、実は災害級のスキルがぶっ壊れていて世界最強にして唯一の剣士になる。あれ? 気がついたら実家が没落していた~
第80話 何故か親父と決闘することになった〜ユングリング家長レオの最後のあがき~
第80話 何故か親父と決闘することになった〜ユングリング家長レオの最後のあがき~
「坊っちゃま。面倒な客人が来ました」
ランチを堪能していた俺を待っていたのは招かれざる客だった。
突然の客人は父親、いや父親だった人だった。
俺はアポもない、無礼なこの客、父――いや、父だった人に歩み寄る。
「で……なにしにきたんえすか? 正直、もう二度と顔も見たくない気分ですが?」
仮にも賢者と称される上級貴族に対して無礼な発言だが。アポもなく、突然訪問して来た無礼な客だ。問題ないだろう。今の俺はアーサーさんの養子、ほぼ同格の貴族だし。
「…………」
父、レオは俺を鋭い眼光で見つめると、口を開いた。
「ノアか。……追放刑から奇跡的に生還した上、猫耳族の里を奴隷商から救ったこと、聖剣教の闇を正したこと、どうせお前の仲間の腕がよかっただけだろう。お前は運には恵まれたようだな。幸運の女神にせいぜい感謝することだな」
「忠告ですか。一応お礼を言っておきます」
一言も感謝の言葉は発しないが、俺と父の関係で今さらだろう。
「アシュフォード領は人材に恵まれているようだな。最近はずいぶんとはぶりがいいらしいな?」
「ユングリング家の領はご愁傷様ですね」
互いに毒舌が尽きない。まあ、俺の方の勝ちだな。最近ユングリング家領が破綻したと聞いた。
まあ、アシュフォード領の人材は優秀……それは否定しないが、元々ユングリング家の家臣達なんだがな。だがそれよりも、俺が活躍していることを信じたくないのだろう。
しかし、父、レオは一体、何をしに来たんだ?
わざわざ嫌味を言うためとは思えん。
「違うよ。ノア君はほとんど一人で猫耳族も聖剣教も解決したんだよ」
「ふん……身内びいきが過ぎるな」
仮にも父親だった人間に身内びいきと言われるとはな。
「要件は何なんですか? できれば、さっさと帰ってくれませんか? 今更あななたと世間話する気にはとてもなれない」
レオは口の端を歪めると、懐から一枚の紙を差し出してきた。
「カール殿下からの通達だ。一週間後、王都の闘技場にて私とお前の決闘を行う予定。それに応じてもらいたい」
「は……?」
なるほどそういうことか……こいつ家の没落を少しでも食い止めようと俺に決闘を吹っかけて少しでも名誉を挽回する気だ。 テオとルイがどうなったか、だいたい察しがついたんだろう。それに悪名高いユングリング家の奴らに対して、最近活躍した俺。
本来、この国を守護する賢者として、面子が潰れたとでも思っているんだろう。
……その腹いせのために、大勢の人が見ている前で、俺を叩き潰す気だ。
「わかりました」
俺は決意した。血の繋がりはないとはいえ、父……その父からここまでの仕打ちを受けて正直俺も腹立たしい。むこうからぶん殴ってもいい機会を与えてくれたんだ。
断る理由はないだろう。
「待つのです」
レオが立ち去ろうとした時、シエナが引き留めた。
「その決闘、ノア様に受けるメリットが何もないのです。決闘の対価が必要なのです」
「……あなたは?」
「勇者シエナ、そしてこの国の第三王女でもあるのです」
「これは失礼しました。ノアが紹介もしないとは」
さりげなく俺の失態に話をすげかえるとかな、腹黒いな。今更反論する気にもなれない。
「対価はお金がいいのです。それと今後ノア様の力を利用したり助けを求めたりしないと誓約書を書くのです」
「わ、私がノ、ノアのち、力を利用……そ、そんなバカな?」
「客観的にそう言われた方が普通なのです」
「くッ」
かつての父は沈痛な面持ちで対価1000万ディナールと今後俺との絶縁、一切の協力を求めないという誓約書を屈辱に満ちた……という顔で書いた。
シエナの機転で、俺は元実家との縁を断ち切ることができる――ここは負けられないが。
「ノア様、これはやられたのです」
「何? シエナ?」
「この決闘、剣も拳も使用不可。魔法のみの決闘とする……」
「何?」
俺は果たし状を読んでブルブル震えた。卑怯にも程があるだろう?
おそらく俺のことを噂で聞き及び、こういう条件にしたんだろう。
猫耳族の人たちは俺のことに感謝して、アシュフォードの街で俺のことを褒めてくれた。
当然、俺とルイとの戦いについても喧伝された。
そう、俺の主武器が剣であることを。
「ノア君なら大丈夫だよ」
能天気にアリスが言う。
「死んだら蘇生してあげるね♪」
「お、お願いするよ」
死ぬの前提で決闘けしかけるの止めてくんないかな? マジで?
「ご主人様なら大丈夫です。僕、あの符術は魔法だと思います」
「あっ!」
俺は符術のことを思い出した。
「そうなのです。剣と拳なしでもノア様は十分強いのです」
「そうだったな」
俺はこの微妙な仲間たちに感謝した。
いや、みんな可愛いだけど……言わせないでよ。
でも、基本はいい子ばかりだ。アリス以外。
「ねえノア君? 勝ったらご褒美に私とデートしよ♡」
「え……? いや、俺はいいけど?」
「ちょっとアリスさん! なんでご褒美がデートなのですか? それならわたくしの方が先にデートをするのです!」
いや、なんだ?
「決闘の後、私がデートするんだもん。ダンジョンで運命的な出会いをしたんだよ! もう、二人は結ばれる運命だよ。だからシエナさんは駄目だよ」
「なんでですの? わたくしは14歳の時に公園で運命的な出会いをしたのです。アリスさんはおバカ要員なんだからわきまえるのです!」
「アリスさん、酷い、私、おバカ要員じゃないよ!」
いや、おバカ要員だろ? と、突っ込む訳にもいかず……どうすることもできない俺。
そのままいい争いになるアリスとシエナ。
「ご主人様、お二人の後でいいのでルナともデートを、いや、お散歩をお願いします」
「「子犬は引っ込ん
なんかよくわかんないけど。
「ほほぉ。モテる男は辛いですな」
執事長のエーリヒが苦笑を浮かべている。
「ほんと、随分とにぎやかだね……」
そう呟く養父アーサーさんも微笑ましそうに俺達を見つめていた。
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