第9話 初めての決闘
目を覚ますと荒れ果て廃墟と化した町にいた。
「......?」
空は夕暮れというには赤すぎて気味が悪い。
「どこだ......紛争地帯......か?」
荒れ果てた町の地面にはいくつも抉られた地面の跡に血痕、辺りを見るがやはり壊れていたり破壊の跡が無惨に残っている。
「なんだあれは」
遠目からでもわかる巨大な建物群。
そしてさらに遠くにあるそれはかすかに見えていただけだが自然物ではない何か、それは塔である、まるで山であると錯覚すらしそうになった巨塔 、もう少し見ていたかったが、すぐに赤い霧に包まれ霞んでいく。
「......くそ」
しかしおかしい、ギルドの本部にいたはずマスターから待機命令を受けていた。なのに、ここは?
「そうだ確か......奴に......」
そして蛇に襲われて急に意識が無くなって、そしてこんな場所に。
「酷いなこれは」
歩いていると開けた場所に到着した、真ん中には噴水跡が残っている。
「無事だったら高く売れそうなのにな、こんなボロボロじゃ無理か」
噴水の中央に巧妙に作られた人物像が無惨に倒れ砕かれている、噴水も既に枯れ果てていた、噴水の底に人々が硬貨を投げ入れていたのか硬貨が残されている。
「......わからない、それなりに見識あると自負しているのに」
硬貨を見てもどこの国製なのかいつの時代のかも推定出来ない。
「......クソ、どうしたらいい――」
鎖が地面に擦れる音がした、すぐ近く
「ぁ」
それはいた、蛇だ、目から尾にかけての赤い模様が不気味に光る。そして身体から突き出ている不気味な突起物、あれはなんだ?
奴は町を徘徊していたのだ、こっちに近づいて来る。
「ひ......」
奴が近づいて来たとき突起物の正体がわかった、あれは人だ、人の残骸だ。
「――けて......」「許すな――は......お――」
奴の身体から聞こえる助けを乞う呻き声は自らのの末路が示していた。
「逃げ......逃げないと......」
足が動かない、ガタガタ震えるッ
奴はどういう訳か身体から血を垂れ流していた、血が滴り落ちると蒸発して消える。
「俺をどうする気だよ......」
口をニタァと尖らせて不気味に笑っていたんだ、そいつは。
「なんなんだよ......」
そいつは人の言葉がわかっている、わかっていて意思の疎通を行わない、わかっているのに平然とあの呻き声を聞いているッ
「ハハハハ」
我慢できなかったのかそいつは笑う、そんな奴の笑い声に細胞単位で俺は震えていた、恐怖していた。そんな気持ちを振り払うためか自暴自棄か俺は大声で思わず叫んでしまった。
「な、なにがおかしいッ!」
そしたら奴はもっと笑って
「――お前は活きが良い」
奴の身体から突き出ている剣とは真逆に突き刺さっている剣が奴の背から腹を貫通していた、その剣の柄頭から鎖が垂れ下がっている所為で動く度、地面に擦れていたのだ。
「我が糧となれ――」
奴はそういって俺に近づいて――
◆◇◆◇
「『ファイアボール』」
俺の『ファイアボール』は真っ直ぐに飛んで、爆発する。
へベルナ曰く俺の魔力が勢いがありすぎるらしい。
「あなたのそれは個性ですね、パワーは申し分ないでしょう」
へベルナの言う通りだ、我ながらパワーはあると思う。
「......そろそろ、本格的な対人戦を考慮した模擬戦を開始しましょうか」
「対人戦......」
「やる事は変わりません、ただ訓練のスピードアップもしたいですからね......
最初ですからゲーム感覚で行きますよ、それにご褒美もあります」
へベルナは俺を見ながら
「何か欲しいものはありますか?」
そうにこやかに告げた――
■
そして――
「ほらほら、早く相殺しないとケガしますよ!」
へベルナはいくつも『ファイアボール』を撃ち込んでくる。
「『ファイアボール』」
同じく相殺を図りへベルナに近づこうとするが――
「アキラ、剣士を目指すなら剣も使ってください!」
「――ッ」
火の玉が目の前に!
剣でどうにか――
「剣ばかりに注意を向けていると魔法は撃てませんよ!」
しまった!
「危な――」
寸での所で避ける。
「敵の攻撃をよく見てください!」
「いや、あの!」
「剣を使わないと捌ききれませんよ!」
剣技についてもっと詳しく教えて!
へベルナは俺が剣を使いたいという思いを汲んでくれてこう言う事を言ってくれている、魔法の長所と剣技の長所を合わせようとしているのだろう......が
「へベルナ!魔法ともかく俺、剣技は全然使えないんだが!」
これ無理だろ!
◆◇◆◇
「『ファイアボール』」
基礎魔法は汎用性が高く、少量の魔力で魔法を行使できるのが強みである。故に鍛え続ける事で様々な状況で戦えるようになる。
「......」
しかし、最近はアキラの成長速度が芳しくない。
■
今日もアキラは元気だ。
「ひゅぅ~、今の魔法は良い感じだったなぁ」
「流石のパワーと言いましょうか、これなら、ゴブリンは蒸し焼きですね」
アキラは自らの魔法を自己評価する、アキラとて別に自分に甘く評価しているつもりはないだろうし、私もそれを責めるつもりはない。
火力に関していえば問題はないのだ、しかし、それは相手の知能が低い場合だ、知能ある敵を相手にはあまり活躍できない。あまりに弾道が一直線すぎるから、容易に避けられる。
「......このままではいけません、しかし」
自室一人で日課の日誌を書く、それに加えもう一つ日記を書くこれは全てアキラの状態を事細かく書いているのだ。
「厳しくしすぎれば彼のやる気を削ぐ結果に......」
いま彼はまさしく魔法を楽しみながら勉強しているのだ、これは大変に好ましい、
長期的に見れば、今のアキラの状態を維持しながら訓練を積むのが一番良い。
「はぁ......」
だが、今の状況はそれを許さない、如何に旧友であったとか、昔はコンビだったとか、結局潔白は証明できないから早く犯人を捕まえる為に短期的な結果を求めざるを得ない。
「どうしたものか......」
本来であれば、冒険者としてコンビを組み長期的な冒険を得て知識を共有することが一番に成長を早めることができる。
「......」
やはり成長の為に模擬戦を行うべきだろうか、まだ時期尚早ではないか。
「はぁ......困りましたね......」
一人頭を悩ませるのであった。
■
「何か欲しい物?」
「はい、模擬戦を行って勝った時のご褒美をと」
へベルナは物で吊るというアイディアを取った、確かにこれならモチベーションの低下をある程度は防ぐ事が出来るだろう、我ながら良いアイディアと思っている。
「欲しい物って言われてもなぁ......」
「お金ならありますから、なんでも欲しいもの言ってください」
「......なんでも......欲しい物......」
アキラは腕を組みながら深く考えている、何を頼むのだろうか、へベルナはアキラが望むモノというのがピンと来ないので地味に興味がわいていた。
「......決めたぞ」
アキラはそういうとニヤリとしながら。
「へベルナの膝枕が欲しい」
「......ん?」
「......へベルナの膝枕が欲しい」
「ほう......ほう?」
「......ダメッすかね......」
「......そんな子犬見たいに見上げないでくださいよ......」
へベルナは軽く頭を抱えて。
「......はぁ......私の膝枕ですか、そんなご褒美でやる気になっていただけるのでしたら、どうぞ」
「マジで」
「――ただし私に勝てたら、ですが......ね?」
◆◇◆◇
へベルナから放たれる『ファイアボール』をあらゆる手段を用いて防いで、へベルナに攻撃を加える事、俺が一回でもへベルナに攻撃を当てる事が出来たら勝ち!
晴れて膝枕!
「ひぃ~」
だが、現実は甘くない。
右手で剣を使い、左手で魔法、これが想像以上に難しい。
「アキラ、剣と魔法、両方扱うのは案外難しいでしょう?」
へベルナはいくつもの火の玉を浮遊させて堂々と佇む。
「その様子ではご褒美はお預けですね!」
「いっいや、まだ負けたわけじゃないだろう!」
「そうですかぁ、では頑張ってください、そぉれ」
いくつもの火の玉が俺に向かって――
「あっ――」
結局へベルナに近づくことさえ出来なかった。
■
「98,99,100......はぁ......はぁ......」
へベルナに惨敗してから、トレーニングを始めた。
これも全ては膝枕の為だ、日々精進しなければ......
魔法以前に肉体が追い付いていなかった、これでは勝てない。
「はぁはぁ」
それに剣と魔法を一緒に使うのは考える事が多くて混乱する。
狙いを定めて剣で切り込み、そして魔法で撃つ、これを一緒に行えない。
「複数作業を一緒に出来る奴が得意そうだな」
俺みたいなバカには難しいか、だが諦めきれない、ここで諦めたら膝枕が......
「剣以前に肉体強化か」
あの魔法の数は恐らく俺が剣を使う事を前提にしての事だ、多分剣技を問われてる訳ではないのだろう、彼女は教えていない事を求める事はしないハズ。
「俺が聞き逃したのか、それとも魔法を上手く使うのか......」
ダメだな、これじゃあまた負ける......
どうやら膝枕はまだまだ遠いようだ......
■
ある日の事いつも通り依頼をこなしていた。
「ゴブリン討伐完了!」
「E級クラスの魔物ならもう余裕ですね」
「依頼完了か」
へベルナとの依頼中にふと疑問に思った事があった。
「......そういえば、依頼とかどうしてるんだ?」
へベルナがギルドを辞めていた以上、どうやって依頼を受けていたのだろうか?
「あぁ【
「ん?へベルナはそのギルドに所属しているのか?」
「えぇそうですよ」
へベルナは少し考える素振りを見せ。
「いい機会です、アキラも折角ですから行ってみますか?あそこなら馴染みやすいはずですから」
■
へベルナに言われるがままソルテシアにある【
派手さはないが、人の行き交う多さ、あきらかに冒険者ではないであろう者も時々混じっていたり【
「ここは料理を出したりして酒場として機能していたりと、別々のギルドの冒険者が集う憩いの場にもなったりしていますね」
「他のギルドの冒険者同士だと話し合わないのか?」
「ギルドの空気によって、ですかね......一般人なら普通に行き来することはありますが、他ギルドの冒険者同士だとどうにも......このギルドはそういった仲介場としての役割もありますから、他ギルドと交友を深めたい冒険者も良く来ます」
長机と長椅子が設置してあるところにへベルナが座り、俺も向かい合うように座る。
「大規模な作戦が終われば、ここで祝賀会をするのが習わしなんですよ」
「なんで他ギルドもここに来るようになったんだ?」
「わかりません、設立が古いので信用されているのだと思います、何かありましたら、冒険者は皆ここに集まりますし」
へベルナと話しているとおかっぱで身なりが少し豪華な男が近づいてくる。
「っそいつ、噂のやつか!?」
「あっアキラ、紹介しておきましょうか、パレハです、パレハ、彼はアキラ、
仲良くしてくださいね」
「待て待てッ、どうしてこの私がこいつと仲良くなること前提なんだねッ!?」
濃い緑の髪を肩まで伸ばしている男、パレハと言ったか、へベルナに抗議をしているな、
結構親しいようだ。
「パレハとアキラ、すぐ仲良くなれると思いますよ」
「無理だッ!」
へベルナは自然に対応しているから慣れてるんだな。
「さぁアキラ、自己紹介お願いします」
「アキラ=フジワラ、よろしく」
「ふんッ」
「パレハ......」
へベルナの言葉を無視するパレハ。
「......パレハ?」
「......ッ」
おいおい、それ以上無視したら......
「最後ですよ、維持を張らないで自己紹介してください」
「......どうして私が――」
「パレハッ!」
杖でパレハの頭をコツンと叩く。
「――いったッ!?」
へベルナが怒った時にたまにやる、手加減してやっているのだろうがそれでも、
あれは痛いんだよなぁ。
「ッへベルナに免じて名乗ってやるさ、私の名前はパレハ=プロイントス」
腕を組んで、あからさまに俺に敵意むき出し。
「っと、名乗ってやったからな、いきなりだが君に決闘を申し込もう」
は?決闘?なんで?
どうやらへベルナも予想外だったようで、少し怒りながら
「パレハ、冗談でも笑えませんよ」
パレハに言うが、パレハの方は特に悪ぶれない様子だ。
「これは君の為を思っての事、グラディウス邸に居たら流石に無理は出来ない......ここでなら捕まえられる」
「......私の旧友ですよ?」
「そんなのは関係ない、君の友人であっても悪人だったら大変な事になるのだぞ?」
「......」
「この辺りは【
パレハ再度俺に顔を向ける。
「さぁ決闘だ、戦え」
「......わかった、決闘を受けてやる」
負ける訳にはいかんなへベルナの面子に係わるし、何よりここで負けたら悔しい。
「パレハ、約束してください、殺さないと」
「それはどうだろうな?」
そして【
お互いが向き合う。
「両者、リタイアを宣言するか、審判が勝敗を決めるまで試合は終わりません、そして故意の殺人行為は禁止です」
審判はギルド内で適当に捕まった人だ、俺の初陣を記念に見てくれ。
「はじめっ」
とっ宣言した途端に
「『ファイアボール』」
「ッ!」
いきなり――
■
喧嘩沙汰、【
そんな中、遠目からアキラを見ている男がいる。
「容疑者の癖してヤケに目立っているな」
白き鎧、銀の髪、薄緑の瞳を鋭くさせているその男のとなりにいるのは緑服に赤いマフラーを深く巻いた女はそんな彼を諫める。女の耳は鋭く長い。
銀髪の男はアルバトロス、口が大変悪いし、最近ではアキラという人間に対してもちょくちょく意識していたりする。
「アルバトロスそう怒るなって、彼にグラディウス家とマギアフィリア家とその直属の部下が監視役を買っているんだよ、この帝国でも名家中の名家達だ、そんな名家の御子息、御息女様が監視していると言い張るのだから帝国も安心して放任しているのさ」
「容疑をかけられた時点で本来は捕まえておかねばならない、我ながらこの帝国の状態に心底呆れている」
アルバトロスは決闘準備をしているアキラ、そしてパレハとへベルナを睨んでいた。
「仕方ないさ最近は【暗闇の蛇】以外にも闇ギルド関連の厄介ごとは多いのは知ってるだろ、人さらいが横行しているしそれの対策もしないといけない、それにコゴートともさ古代遺跡はどこの国のものかで揉めてたし」
「だから余力がないか?馬鹿馬鹿しいな、だったらなおのこと内部の不安の芽を摘むべきだ」
「血気盛んなようでへっへっへっ、優先順位だよ危険な方に重点を置いているのさ」
「危険なのは【暗闇の蛇】もだ」
女はヘラヘラと笑う、アルバトロスはそんな少女を睨む。
「おぉ怖い怖い」
まったく若い男は血気盛んだ。
「......しかしこのままだとへベルナの地位も危ういってパレハを煽るなんて、君も悪い奴だ」
「奴の戦闘能力を把握しておく必要がある、へベルナ曰く旧友との事だからな」
「ふぅん旧友ねぇ......んじゃボクも見物しようか」
へべちゃんが推す人間だからね。
■
「『ファイアボール』」
パレハは基礎魔法であるファイアボールを使ってくる――
「(舐めんなッ、そんな魔法当たるかよッ)」
ファイアボールなんてずっと見てきた、右に避け――
「ッ!?」
――が、弾道は右にずれる。
「(カーブッ!?)くッ!」
どうにか剣技でファイアボールを切り捨てて――
「『ファイアボール』」
お返しだ、左手で魔法を撃つ。
「(クッ!)」
パレハは相殺を図ろうとしたが――
「ッ!」
火力が足りないと判断して避ける。
真っ直ぐと飛んでいく火球はパレハのそれとは違い大きい。
「(これじゃあ、相殺は無理か?クソッ!)」
「(ダメだ、当たらないなこりゃあッ!)」
このままじゃあキリがないッ!
「左手に魔法、そして右手で剣――」
「『ファイアボール』」
パレハは6つの火の玉を浮遊させて、次々とアキラに発射する。
グルグル回って軌道が読みづらッ
走る――
「(へベルナのに比べたら、避けられる)」
一つが飛んでくるが切り捨てる――
もう一つ飛んでくるがこっちの『ファイアボール』で破壊する――
しかし、4つ一気に飛んできた――
「(まずいッ間に合わないッ!)」
流石に4つは捌ききれない――
「(やっぱまともに習ってない剣技じゃ......)」
そんな時外野から声が聞こえてきた。へベルナの声だ。
『防ぎ切れます、問われているのは剣技ではなく、魔力ですッ!』
魔力?
「(そうだ、魔力は生命力つまりパワーっ、そして魔力を武器に纏わせれば――」
アキラは自らの魔力で自らを纏う。
「(様子が変わった......だからどうした、お前の実力は大体把握でき――)」
「オラァァッ!」
剣に魔力を纏わしてそれを思いきりに4つの火球に向けてなぎ払う。
「『魔光破』」
純粋な魔力による衝撃波という荒業、それは火球を相殺するのに十分な火力を有していた。
「ッ後は――」
怯んでいるパレハに攻撃するために全速力――
「――ッッ『フェザーウィンド』」
「――『ファイアボール』」
パレハは翼を模した腕で大きく羽ばたくと風の刃をまき散らし、それのカウンターとしてアキラはファイアボールを全力で解き放つ。
お互いの魔法がダイレクトに命中した――
■
決闘が終わり、両者が倒れる。
「D級程度か......」
「え、Cはあるでしょパレハを倒してるし」
「総合評価だ、奴がどうしてあそこにいたのか本当に友達を思っての事だったのか......ふん、まぁいい」
アルバトロスはアキラの戦闘を遠目で見て評価を下し、
もう見る物はないと背を向けていた、おいおい、こいつは自分でパレハを煽っていた癖になんて身勝手なんだ。
「なんだ帰るの」
「そうだ、【暗闇の蛇】のギルドの場所がわからない」
「そりゃ隠してるからでしょ」
「......貴様、本当に何も調べてないのか」
「そういうのは面倒でね」
アルバトロスは心底呆れている、仕方ないさ、ボクはめんどくさがりなんでね。
「【暗闇の蛇】で街中に潜んでいた奴を捕まえて口を割らせてもどういう訳か見つからない」
「あー幻術かな?」
「知らん、だが何かしらの魔法でカムフラージュされているのは確かだ」
アルバトロスは最後にそう言って、その場から立ち去る。
「アルバトロスめ、もうちっと可愛げが欲しかったよ」
あら、空の色が変わってる、いつの間に。
「へべちゃんも頑張ってるなあ」
ボクも頑張らないとね。
■
気が付けば夕焼け空、一体どうなった?決闘の結果は!?
「――ッ」
痛っ......
「勝てた......のか?」
いや、近くにパレハがいる......、恐らく同じように倒れているんだ。
「......引き分けか」
初めての決闘は引き分けか
「この私相手に......」
ボロボロなパレハ、まぁ初めてにしては良い方か......
「はいはい......」
なんか疲れて雑に返事してしまう。
「一回戦っただけで、扱いが雑過ぎるのでは!?」
「いや、強かったよ、うん、間違いなく」
一回戦っただけでこんだけ疲れるなんて、プロはこんなのをずっとやり続けているのか......
俺とパレハは近くで倒れこんでいるとへベルナが近づいて来た。
「アキラ、パレハ、良く頑張りました、パレハは『ファイアボール』の練度が前より良く上がっていました、アキラの『ファイアボール』にすぐ反応して『フェザーウィンド』で反撃をしたのは良かったですよ」
「......」
「アキラ、『魔光破』はあなたの有り余る魔力で成した荒業、アレはあなたのオリジナルの技です誇ってくださいね、二人とも素晴らしい試合でした」
「あぁ、どうもな」
へベルナは俺たちの頭の近くで話し続けている。
「パレハ覚えていますか、あなたは昔、私に泣きついて魔法を――」
マジか、二人が倒れてる、この状況でも思い出話に入るのか......。
「パレハ......ん?」
パレハの目線が上を向いている。
へベルナは俺たちの頭の間に立って思い出に浸っている。
この図式で導き出せる答え――
「......」
パレハ静かに笑みを浮かべている。
「......」
ふっなるほどな......黒!
俺たちはこの時初めて心を通わせ一つになった気がした――
「......『サンダーボルト』」
「「ギャァァ!」」
決闘という対人戦で勝つことは出来なかったが引き分けに持っていくことができたし
それに色々あったがパレハ=プロイントスという新しい知り合いが出来た。
後はへベルナの膝枕を掛けた勝負に勝ち、被害者を回復し、事件を解決するだけだ、少しずつだが確実に事態は好転していっている。それが何よりも嬉しい。
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