104――【ゆ】

 湯船に【ゆ】が浮いていた。

「……ゆ?」

 それを手に取る。どこからどう見ても平仮名の【ゆ】だ。

「湯、だけに?」

 しばらくすると二つ目の【ゆ】がポコッと浮いた。さらに三つ目、四つ目と……。

「湧いてる?」

 やがて湧き出る【ゆ】で、湯船が埋め尽くされた。

「【ゆ】ズ、だなぁ」

 ふと良い香りがした。

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