37-姉君と恋人殿と白き高位精霊獣殿と俺
異世界についての情報は、多少は白き高位精霊獣殿から頂いた。
白い空間の清浄な空気も心地良い。かなりの速度で背景に流れているのはおそらく、コヨミマトイ殿とその周辺の方々のご様子だろう。
コヨミ王国初代国王陛下の異世界転生に尽力した協力鳥の血を引く優秀な鳥が姉君と姉君の恋人殿を連れて来てくれているようだ。
そして、鳥殿は高位精霊獣殿が憑依されるに足るほどに優れた鳥らしい。
そんなことを考えていたら、俺の体が
「え。何、銀メッシュ?」
このお声は姉君か。
言葉は普通に理解できている。明かりの道具は魔道具と異なり、魔力を込めなくても触れれば良いらしい。かなりの光彩だ。
さっきまでの俺の体の方が強い光を発してはいたが。銀メッシュとは髪の色のことか。
「あ、この色、銀じゃなくて
こちらが恋人殿か。
確か、コヨミマトイ殿の上司でいらした筈だ。
「お初にお目にかかる。コヨミ王国初代国王陛下のご血縁よ。我が名はニッケル・フォン・ベリリウム・コヨミ。コヨミ王国第三王子だ。本日より、コヨミ王国の俺の体に転生された
どうだろう。
若い女性の声音であるが、俺という人間が『乙女げーむ』の俺らしき者よりは救いがあると思って頂けていればよいが。
姉君はよりによって、
黒曜石よりはスズオミの赤銅色に似た髪の女性だが、姉君であられる事は気配で分かる。
「え。こよみん異世界転生? 本当にコヨミ王国初代国王の血縁さんだったの? それじゃこよみん姉もそうなるんだ。あれ、じゃあナーハルテちゃんを実力で幸せにしちゃうんだ! やるじゃん!」
恋人殿はしきりに感心されている。
こちらは宵闇のような美しい黒髪の女性だ。眼鏡が俺達の世界よりも細身で緻密な細工物なのだな。あちらの知り合いに少し、似ている。
「え、いやだって。雀が渋いイケボで人の言語を音声化したりくちばし打法でパソコンのキーボード叩いたりりしたら、ねえ……?」
恋人殿は姉君に、何故異世界転生を瞬時に理解されたのかを説明されていた。
いけぼ、ぱそこん、きーぼーど。俺には分からない言葉が多い。
こちらの基礎知識も色々と勉強しないといけないだろう。イケメン、は知っている。セレンが使っていたからな。
『よかったよかった。茶色のものに感謝せねば。初代の茶色のものに伝えようぞ』
いけぼ、とは白き高位精霊獣殿の威厳のあるお声のことらしい。
茶色のものは今憑依されている茶色の鳥殿だろう。すると、初代の茶色のものとは、初代の協力鳥殿のことか。
……もしかしたら、その功で死後に精霊獣として転生されたのかもな。
「いやー、とりあえずまぬけ王子呼びはまずいから呼び方どうしようか。コヨミだからこよみんのままでいい? あ、暦が名字で名前がまとい。そちら風に言うと、マトイ-コヨミ」
なる程、俺はこれからマトイ殿となる訳か。
「異存はないぞ恋人殿。ただ俺もマトイ殿の話し方などを学ばねばな。記憶に残されているものを活用させて頂くか。白き高位精霊獣殿、お願いできますか」
『よいよい、任せよ。先に転生成功をあちらに伝えてからだが』
「こよみんの記憶から転生以後の脳と肉体に転生以前の活動内容を伝えるんだね。だったらけっこう早く仕事復職してもらえるかもだ」
姉君は戸惑われているが(当然だ)、なかなかに会話が上手くいっている。
「あたしの同居人が異世界の第三王子殿下なのは構わないの? 心配とかないの?」?
という問いには、
「えー、へんな奴よりまぬけな奴の方がましだよ。パソコン使い雀氏もほとんど毎日見回ってくれるんでしょ?」
とのことだ。
協力鳥殿はかなりの信頼を得ているらしい。このままここで、俺の異世界生活を続けさせてもらえるなら、とてもありがたい。
マトイ殿のご記憶の為か、俺もこの住まいを心地良く感じている。
ナーハルテ、スズオミ、セレン、ライオネア、他の友人達。
そして、母上、父上、姉上、兄上方、学院長先生、精霊宝珠殿達。
かくして、俺の異世界生活が始まりました。
……第三王子でありました時とは異なる日々に期待を寄せるばかりであります。
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