第860話 割る

 大学生の頃の、ある寒い冬の夜。


仲間四人で飲みに行くことに。


居酒屋に入り、何を飲むかとなったところで、選ばれたのは


『焼酎お湯わりセット:ボトル』


「すいませーん」

「はーい」


女性店員の胸には『新人研修中』のポップ。


そこにおくさん、


「焼酎の一つ」

「えっ」

「えっ?」

「……(ボトルを)割るんですか?」←たぶん新人だからメニューを把握してないので思い当たらない。

「(お湯で)割らない方が美味しいですか?」

「えぇ……」

「えぇ……」


僕ら三人、なんとなく口を挟めないまま、


「……ボトル割りですね、かしこまりました」


そのままオーダーは通ってしまった。


その他おつまみも承って厨房へ戻る店員さんを見送りながら、おくさん一言。


「『まずはビール』って推奨される理由が分かった」

「絶対違うから」

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