第347話 お寺 その三
おくさんがお茶ペットボトルの『サラリーマン川柳』を読んでいる。
彼女はそこから目を逸らさずに語る。
「たまにさ、俳句に特定の地名とかが出るじゃん?」
「そうだね」
「あれって『その固有名詞』じゃないと成り立たないのかな」
「たとえば?」
「『柿食えば 鐘が鳴るなり 法隆寺』」
「それは奈良が柿の名産地だからね」
「東大寺でもいいじゃん」
「風情ないこと言うなぁ」
「『柿食えば 鐘が鳴るなり 本能寺』」
「信長は干し柿好きだったらしいから、死ぬ前に食べたかったかもね」
「ほら、成り立った」
でも意味が変わるのでダメです。
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