第55話 花束

 特に何があったわけじゃないけど、思い立っておくさんへ花を買って帰った。


恥ずかしながら好みをよく知らないことに気付いたので、赤い薔薇と白い百合を数本ずつ買ってきた。


正直普通過ぎるとか言われそうな気もしたが、そこはおくさんの寛大さに期待した。


プレゼントを贈る側のくせに僕もアバウトな奴だと思う。



結局、当のおくさんはと言うと、


「うん。嬉しい」

「本当? 良かった。好きな花とか知らなくてさ、ごめんね?」

「ううん、大丈夫。薔薇も百合も、今好きな花になったから」

「それって……!」

「特に好きな花とか無いから、今後はこれらが暫定好きな花ということで」

「あっ、はい」


興味無いのね……。

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