第13話

 普段塾は9時半に終わる。

 だけど、テスト中という事で9時に授業が終わった。

 駅まで数学Aの参考書を読みながらゆっくり歩く。

 やべーここの問題の解き方わからん。

 先生に質問したらよかった。

 でも、あの先生の口臭いからなー。


 多分、今日も俺の方が早く駅に着くだろう。

 今は9時18分。

 45分の待ち合わせまでめっちゃ待つ時間あるなと思いながらホームの階段をのぼる。

 最近、老化が激しい。

 階段を登っただけで疲れる。

 ふと電車を見ると佐藤さんが乗ってるのが見える。

 泣いてる?

 電車がゆっくり動き出す。

 どんどん距離が離れていく。


 最近、彼女との心の距離も離れてる気がする。

 昨日も今日も避けられている気がする。

 一緒に帰りたかったな。

 もっと、隣にいたかった。


 って、何考えてんだよ。

 隣にいたいって。

 そう思ってる自分が一番わ!

 隣にいたいと自分がイタイはかかってます。


 俺はあいつに恋なんてしていない。






 テスト3日目。

 今日の試験は数学A、日本史と保健体育。

 佐藤は数学A、B両方苦手だ。

 なかでも、Aの方は不安だ。


 朝、下駄箱で彼女の後ろ姿を見つける。

 人で溢れているのにあいつの事は見つけてしまう。


「おはよう!山本くん。」


「おう。おはよう。」


 昨日避けられたと思ってたのに普通だ。

 えっ。普通なのなんか怖いんですけど。


「私、美希さんに遠慮しない事にした。

 これからは頑張って積極的にいくから!」


 何この笑顔。

 輝いてるぞ。


「話が全く分からないのだが?」


「分からなくていいよ。覚悟しててよね。」


 そう言って前を向いて歩き出す。


 俺嫌われてないのか?良かった。


 あ!そうだとこちらを向く。


「付き合ってくれてありがと。」


 え、ふぇ。

 俺アイドルと付き合ってたの?

 こんな美少女と???


 そして、わざとらしく言う。

「テスト勉強にね。」


 そっちかー。

 別に残念そうにしてないぞ。

 付き合ってる事でいいか、なんて思ってないからな。


「今、ドキッとしたでしょ?

 まぁー、私は魔性の女だし?」


「全くしてないが?

 ていうか、佐藤さんの方が顔赤いからな?」


「ふぇ。えーー。べ別に照れてないわよ!

 じゃあね!」


「やっぱり、・・・ネットで調べ・・・無理。全然、ドキドキし・・・。最悪だよぉ・・・」


 最後、なんて言ったんだ?

 ってか、上目遣いで話されてドキドキして死ぬかと思った。なんだ最後のツンデレみたいなセリフ。

 可愛い過ぎんか?


やべぇ。テスト勉強したのほとんど忘れた。

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