養鶏場の後任



 その日、小さな男の子シグナは近くの養鶏場の手伝いをしていた。


 鶏の体調を確認して、餌箱に餌を入れていく。


 それを本来行っている人間はいない。


 なぜなら、その養鶏場の息子が学校に行くからだ。


 それではこの養鶏場がまわらなくなってしまう、働き手がいなくなってしまうため、シグナが代わりに雇われる事になったのだ。


 男の子は、やってきた養鶏場の息子に「兄ちゃんおはよう」と声をかける。


 寝ぼけ眼で、頭に盛大な鳥の巣をつくっている。


 どうやら、養鶏場の様子を見に来たようだった。


 男の子がきちんと仕事ができているかどうか確かめにきたらしい。


「俺は今日から学校に行くけど、分からない事があったら、父さんと母さんになんでも聞くんだぞ」

「分かったって、もうそれ何度目? 兄ちゃんは何にも心配しなくていいんだよ、学校に行ってよ」

「へいへい。シグナが俺よりしっかりしてるから心配はしてないよ。でもたまに機嫌を損ねた鳥畜生が襲ってくるから、そこは本当に注意だぞ」

「そんなんされるのは兄ちゃんだけだよ。大丈夫だってば」


 鳥畜生呼びしている息子は、鳥の事が苦手らしい。


 シグナは、おっかなびっくり作業をしている所を、よく見ていた。


 遅刻してはいけないので、養鶏場の息子をその場からおしだして、自分にまかされた仕事をこなしていく。


「ほらほら、もう行った」

「ああ、行ってきます!」

「まずは、ニワトリの餌からだな! よしっ頑張るぞ」


 数年前、身寄りのなかったシグナを保護したのは、養鶏場の息子だった。


 だから、その恩を返すためにがんばっているのだった。


「あっ、頭なおせっていうの忘れてた。でも、いっか。どうせ途中で気が付くだろうし」


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