第Ⅰ章 第9話 ~そして、バーヒャルト要塞へと至る~

~登場人物~


ノイシュ・ルンハイト……主人公。男性。ヴァルテ小隊の術戦士で、剣技と術を組み合わせた術剣の使い手


ミネア・ルンハイト……ノイシュの義妹。女性。ヴァルテ小隊の術戦士で、霊力を自在に操る等の支援術の使い手


マクミル・イゲル……ヴァルテ小隊の隊長。男性。ヴァル小隊の術戦士で、増強術という支援術の使い手


 ウォレン・ガストフ……ヴァルテ小隊の隊員で、戦士。男性。あらゆる術を無効化する術耐性の持ち主


 ノヴァ・パーレム……ヴァルテ小隊の隊員で、術士。女性。様々な攻撃術の使い手


 ビューレ・ユンク……ヴァルテ小隊の隊員であり、術士。また修道士でもある。女性。回復術の使い手









ノイシュは身体中にのしかかる鎖帷子くさりかたびらの重さに思わず立ち止まり、手にした水袋をあおった。体温で温められた液体はお世辞にも美味しいとは思えないが、疲弊し切った身体は瞬く間に潤いを五臓へと染み渡らせていく。


 そのまま一気に残りを飲み干すと、ノイシュは大きく息を吐いた。頭上に視線を向けるとと茜色のとばりが無限に広がっている。


 行軍を開始して今日で三日目となり、既に十万歩は踏破しているはずだった。後続の仲間達も荒い息を吐き、足取りも重い。方角が合っていればそろそろ味方の陣に到着する頃合いのはずだ――


「おい、右手の方向に何か見えるぞ」

 まるでこちらの心理を読んだかのように背後からウォレンの声が聞こえる。


 彼の指し示す方向へとノイシュが眼を凝らすと、自分達を囲むように屹立する断崖の一部に大きく断ち割れた場所が見える。


 遠目からではあるが、狭間に収まるように城門や物見やぐららしき陰影も視認できた。おそらくその尖塔には、レポグント王国の紋章である黒獅子を綴った旗が掲げられているはずだ――


「あれがバーヒャルト……」

 隣に立つミネアの声が耳に入り、ノイシュは静かに頷いた。既にあの城塞はレポグント軍の手中にあると聞く。何としてもあそこを奪還しなければ、必ずや敵軍はバーヒャルト要塞を拠点として聖都メイに侵攻してくるはずだ――


「味方の陣地も近いはずだ。行こう」

マクミルが合図を送ると、仲間達が行軍を再開していく。

周囲から漏れる安堵の息を聞きながら、ノイシュもまた歩を進めていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る