第3話 俺、ちょっとリッチになる

 俺達は隣町で荷馬車を降り、乗合馬車に乗り換えた。

 旅も良いもんだな。

 魔力操作の訓練にも熱が入る。


 大気魔力を循環、圧縮、そして放出のサイクルを素早く出来るように訓練。

 基本の技術の土台は既にあるので、難しくはなかった。

 それと、サマンサの手を握らずに魔力補給もやってみた。

 俺の体内から魔力を放出、大気で循環、そしてそれをサマンサの体内に入れて循環。

 少し複雑だが、なんとか形になった。


 魔力タンクとして生きるのは別に良いんだが、魔力中毒で殺す方法を得た今となっては、そちらの方が魅力的だ。


「オーガが出たぞ」


 モンスターの出現が増えているのか。

 まあ、よくある事なのかも知れない。

 旅にでた事がないから分からない。


「ほら行くわよ。ぐずぐずしない」

「へいよ」


 馬車を降りると真っ赤な皮膚をした3メートルの巨人が立っている。


デス


 魔法が使えるようになった訳じゃない。

 見られた時の言い訳だ。

 死魔法が使えるという設定にしてある。


 高濃度の魔力で中毒になりオーガは死んだ。

 ふむ、この攻撃の死魔法もどきも、だいぶ様になってきた。


「これどうしよう」

「馬鹿ね。持って帰るのに決まっているじゃない。収納ストレージ


 黒い穴が現れオーガの死体が消える。


「取り分は山分けだからな」

「決まってるじゃない。それより魔力回復」

「へいへい」

「今日は上級の宿に泊まるわよ」

「たまには贅沢もいいかな。ところでモンスターは増えているのか」

「オークのスタンピードは例外として、こんなもんじゃないの」

「物騒だな」

「火球の魔法の一発ぐらい誰にでも撃てるわ。撃退は容易いのよ」


 日本の物差しで判断してたな。

 誰もが銃火器を持っていると考えたら物騒でもないのか。


 馬車が街に着く。

 俺達は冒険者ギルドの買取所に行った。


「お嬢さん達、一角ウサギでも獲って来たかい」

「ふふふ、収納ストレージ


 オーガの死体が現れた。


「オ、オっ、オーガ」


 ギルドの人間が腰を抜かさんばかりに驚いた。


「早く査定しなさいよ」

「お嬢さん達が倒したのかい」

「ええ、そうよ。何か文句ある」


「いやないけど。金貨12枚でどうかな」

「それで良いわよ」


 やった金貨6枚の儲けだ。

 冒険者って稼げるんだな。

 俺達は意気揚々と宿を探して街を歩いた。


「つけられている」

「分かってる。路地に入るわよ」

「了解」


 路地に入るとごろつきとしか言いようのない三人の男達が現れた。


「口を開かなくても良いわ。どうせ金を置いていけでしょ」

「分かってるなら話は早い」


「お断り。サンダーサンダーサンダー


 サマンサが男達に雷の魔法を放つ。

 魔力が尽きたようなので補給する。


土壁アースウォール


 男の一人が防御した。


風の矢エアアロー

炎の矢ファイヤーアロー


 男達二人は攻撃役のようだ。


石壁ストーンウォール石槍ストーンジャベリンサンダーサンダーサンダー

 サマンサが石壁を出して防御。

 魔力が尽きたので補給。

 魔法を放つ度に補給。

 石槍は土壁を崩し、雷が男達を痺れさせた。


「たわい無いわね」


 サマンサは男達の懐を探って冒険者カードと財布を取り上げた。

 これに懲りたらカツアゲは辞めるんだな。


 俺達は高級宿のフロントに行った。


「この宿に来る前、物取りに襲われたので撃退したけど、冒険者だったみたい。このカードをしかるべき所に出して処理して下さる」

「はい、承りました」


 宿にチェックインして俺は思った。

 やっぱ目立つのは駄目だな。

 それと非殺傷の攻撃が欲しいな。


 サマンサは意外に物知りみたいなので相談する事にした。


「なんか対人用の攻撃手段が欲しいんだけど」

「お金があるから、護身用の魔道具でも買ったら」

「そうかその手があったか。今から買いに行きたいから、付き合ってよ」


「馬鹿ね。コンシェルジュに頼みなさい」

「こういうホテル使った事がないから。サマンサは何時そういう事を知ったんだ」

「私はこう見えて貴族の血筋なの。継承権があったりしないから、爵位は手に入らないけどね。代々貴族の係累と婚姻していて、法事なんかに呼ばれる事もあるのよ」

「お金が大変そうだ」

「そこは呼ぶ方に出してもらっているわ」

「なるほど」

「今回、王都の魔法学院に入るのも婿探しなのよ。お金は懇意にしている貴族に援助して貰ったわ」

「色々、あるんだな。頑張れよ」


 俺はフロントでお金を払い護身用の魔道具を手に入れた。

 形はスタンガンそっくりだった。

 金貨一枚したが、良い買い物をした。

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