魔力を体内でひたすらグルグルしてたら無敵になりました

喰寝丸太

第1話 俺、転生

 ばぶぅ、俺は転生しました。

 父はロイド。

 母はラナ。

 俺はザイク。


 ありふれた農家の一家だ。


 周りを良く観察するとみんな魔法を使っているのが分かった。

 異世界なんだなここは。

 俺はワクワクしながら魔法を使える日を待った。


 そして、3歳になった。


「今日から魔法を教える」


 父さんが真剣な顔でそう言ってきた。


「早く教えて」

「慌てるな。まずは体内の魔力を感じるんだ」


 腹の中を注意深く探ると暖かい物があるのが分かった。


「できた。お腹の中にポカポカしている物がある」

「それだ。今度はそれを指先まで持ってこい」


 体内の魔力を指先に移動する。

 のろのろと魔力が腕を伝わって指先に来る。

 簡単に出来たな。


「出来た」

「次は光を思い浮かべて。ライト


 父さんが魔法の見本を見せてくれた。

 光が生まれる。


ライト


 俺も真似してやってみたが、出来ない。


「おかしいな」

「もう一度。ライト


「ふむ、魔力感知マナセンサー。これは、なんて事だ」

「どうしたの」

「いいか良く聞け。魔力は指先まで通っている。魔法語の発音も完璧だ。原因は魔力の現象変換だ。こういう人は稀にいる。いいか気を落とすんじゃないぞ」


 俺は魔法が使えないのか。

 これは俺が転生者だからなのかな。

 原因はまあ良い。

 原因を今更知った所でなんとかなるような気はしない。

 俺は俺に出来る事をするんだ。


 出来る事を精一杯やる。

 それが仕事する上で大事だ。

 サラリーマン時代にそう教わった。

 出来ない事は教わるか、出来る人にやってもらえ。

 その言葉に従ってやって来た。


 俺に出来る事ってなんだ。

 指先まで魔力を運ぶ事だ。


「俺にも魔力は動かせる。俺は魔力操作キングになる」

「おう、それはいいな。魔力を的確に早く動かせば、魔法を使う時に効率が良くなる。体内をグルグル魔力を回す訓練は、魔法を使う奴なら誰でもやる事だ」

「なるほど」

「だがな、いくら魔力を早く動かせても魔法は使えないぞ」

「分かってる」

「そうか。すまんな、五体満足にしてやれなっくて」


 父さんは嗚咽を堪えている。

 こちらこそ、すみませんだ。

 不出来な息子だけど、よろしくお願いします。


 俺は体内で魔力を回し始めた。

 のろのろと魔力が動き体内で循環する。

 意外に早く動かすのは難しいな。

 俺は魔法を使えないのを忘れて魔力操作に夢中になった。


 それから1年。

 のろのろだった魔力の循環もかなり早くなった。


 それから2年。

 魔力循環の速度が上がり難くなった。

 俺は魔力を細くしたり、循環を二つにしたり、指先まで循環するように工夫した。


 それから3年。

 寝てても循環が途絶えなくなり、魔力循環の速度が頭打ちになった。


 そこで俺は考えた。

 魔力で体内にポンプを作って循環させよう。


 それから4年。

 魔力ポンプは完成に至った。

 循環速度は以前の倍以上だ。

 魔力を循環していると魔力量も倍以上になっているのに気づいた。


 そして5年目。


「やーい、魔欠者」


 子供達が俺を馬鹿にする。


「俺を馬鹿にしているのか。いいか、これはお前には無い俺だけの特徴だ。悔しかったら真似してみろ」

「こいつ、頭おかしいんじゃ。行こ行こ」

「そうだよ放っておけばいい」


 子供達が去っていった。


「俺は魔力操作キングだ。この称号ある限り俺はくじけない」


 俺は家に帰った。


「あら、お帰りなさい。少し暗いわね、ライト


 出迎えてくれた母さんのラナが光の魔法を使う。

 光は出ない。


「魔力切れね。今日は水を沢山出したから」


 なんとなく俺の魔力を分けて上げられたらと思った。

 やってみるのはただだし、やってみよう。


「手を出して」

「えっ、何よ」


 母さんの手を握り、手から魔力を流し込む。

 流し込んだ魔力は霧散してしまった。

 駄目か。

 俺はつい癖で流し込んだ魔力を母親の体内で循環させはじめた。

 母さんの魔力と流し込んだ俺の魔力が混ざる。

 流し込みを止めたが魔力は霧散しない。


「魔力を補充してみたから」

「うそっ、ライト。ほんとう、魔力が戻っている」


 俺は今までの努力が報われた気持ちになった。


「母さん、ありがとう。俺にも出来る事が一つ増えたよ」


 それからは体内の魔力ポンプを増設強化。

 循環の速さと蓄える魔力量の増強に努めた。



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