第28話 卒検中に前方のふらふら自転車は怖すぎる…早く別の道路に移ってくれ…

11月24日、快晴。いつも通り、朝8時の送迎バスに乗り、教習所に着いた。


 明日は自宅に帰る事ができる。ウリエルは徐々に占有率が減り、今は体感2割くらいだろうか。


「この風景も2週間、慣れると離れるのが寂しくなるな」

 

 ウリエル「色々な人が免許のために集まる、不思議な空間であった」


「午前中に卒業検定があって、あとは運転するだけだ」



 アナウンス「卒業検定の方は、二階の第四教室に集まってください」


 前田「はい、今日は二輪2名、MT2名、AT3名の受験ですね」


 説明を受けたが、要は試験官にブレーキを踏ませず、標識通りに運転すればよい。

 持ち点100から始まり、細かいミスのたびに減点し、終了時点で70点以上なら合格となる。


 前田「では四輪の5名は、コースを一巡するのでバスに乗ってください。バイクの方は40分に試験を始めますので自由にしていてください」



 高瀬「あー、ようやく通い合宿が終わりますよ」


 沢畠「大変だったけど、今日が最後ですね」


「我ら3オッサンは2回目ですからね。問題なくいけますよ」


 女性斎藤「ああー、緊張するー!!」


 高瀬「初めてっすか? ならLine交換しません?」


 斎藤「えええぇ!? いややめときます」


 沢畠「おいおいタカやん。今口説いちゃダメでしょ」


 高瀬「へへ」



 バスに乗り込み、今日のコースを説明した。1台で2名の試験者が乗り、前半と後半で運転する。途中で一度停車指示が出るので行い、交代ポイントでは駐車する。教習所に戻ったら、それぞれ1回方向変換を行う。

 乗り込むところから始まり、電源を切るところで終わる。そのため、ミラー調整やシートベルトなどの見落としで減点があるのだ。


 前田「では沢畠さん、お願いします。後半は織江さんが運転します」


 沢畠「はい」



 運転始めて教習場を出た直後、ふらつきながら車線でフラフラする自転車がある。こちらに音では気づいているが、いつ右に映るか分からない。



(うわぁ…前方の卒検中にふらふら自転車は怖すぎる…早く別の道路に移ってくれ…)


 後部座席で座っていた俺は、入校式同期の沢畠さんの合格を祈り、目の前で走っている自転車を中止した。


(遅すぎるので、ゆっくり追い抜いていも良いが、一歩間違えば横断者であり教官がブレーキ踏んで一発終了だ)


 フラフラしながら20秒間、時速10キロのクリープ現象で静かに追いかける。その後、左の道に移動し、ようやく加速できた。


 そこから先は、何度も見た上級コース。免停からの取り消しからも運転技術は十分にある。広い直線で停車し、次のポイントで駐車した。


 ※停止者した後にハザードランプを出すが、右折ウィンカーは出ません。ハザードを消すと右ウィンカーがでるので、左右後ろをしっかり確認して3秒後に出ましょう。進路変更の指示なので、3秒待たずにアクセル踏むと減点になります




 前田「はい。では織江さん、お願いします」


「はい、よろしくお願いします」



 バスで見た通り、速度と横断歩道の確認を意識して進んでいく。途中、左折直後にデカいトラックが停車している。

 対向車が多く、無理に追い抜くのは難しい。後続の車が多くなってきたが、無茶はできない。


(こんな時にやりにくい追い抜きが…やるしかないのか…)


 対向のトラックが隙間を開けて止まり、こちらに手で合図を出した。これは検定車と分かって譲ってくれたようだ。


(よし、ここでゆっくり障害物を避けよう)


「!?」


 停車していたトラックが、急に動き出して発進した。荷下ろしが丁度終わったのか、そのまま進行で来た。


(ありがたい。運がよかった)


 ウリエル「そもそも停車がなければもっとよかったがな」



 その後、ブレーキを踏まれることなく安全運転で教習所に戻ってきた。2番ポールの停留所に30センチ以内で止まる。問題なしだ。



 前田「はい、ではこのままエンジンをかけて方向変換に行きます」


「はい」


 前田「方向転換するところ以外は、特にチェックして減点しないので安心してください」


 そのまま発進する。


 前田「8番を右折して、方向転換してください」


「はい」


 20回はやったであろう、バックの方向転換。問題なく出る事ができた。



 前田「次は沢畠さん、方向転換お願いします」


 沢畠「はい」


 すべてを出し切ったあと、俺は窓の外の雲なき空をぼーっと眺めていた。



 前田「はい。では電源を切ってください。お疲れさまでした」


 沢畠「ありがとうございました」


 「沢畠さんは、次の斎藤さんの運転のために乗ってください」


 沢畠「わかりました」



 俺はその後解放され、ただ結果を待つことになる。スマホを取り出し、美しい風景を撮影した。




 卒業当日、結果まであと1時間。

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