ニコニコの歌ってみたタグ界隈に関する雑感
週刊歌らん作者
2021年の歌ってみたタグ界隈に関する雑感
2020年もあと数時間で暮れようとしております。
おかげさまで、2021年4月には週刊歌らんは650回を迎え、11月には13周年となりました。そんなこんなで10年以上歌ってみた界隈を第三者的な立ち位置で主に再生数などといった数字を中心にみてきた流れで2021年をざっくりと振り返りますと2021年は
・緊急事態宣言の影響は歌ってみたにも
・ボカコレと歌ってみた
・ニコニコに原曲が上がっている楽曲がよく歌われる
・上位層が完全に入れ替わる
・まふまふさんが紅白出演
といった年でした。
まず、歌ってみたの年間投稿数ですが、85,444本(2020年12月25日午前5時~2021年12月25日午前4時59分59秒に投稿され、2021年12月25日午前5時時点で視聴可能だった動画)となり、2020年の同時期に投稿された動画本数と比較して4,013本減少しました。
4月までは毎週ほぼ2千本を超え、前年同時期を大きく上回るペースで来ていたのですが、3回目の緊急事態宣言、そして4回目の緊急事態宣言と続き、さらに4回目の緊急事態宣言が全国へ広がったことにより、歌ってみたの主な収録拠点であるカラオケボックスなどが休業を余儀なくされたことで投稿本数が減少しました。2021年9月第4週には年間最少投稿本数となる1,579本を記録しています。緊急事態宣言が開けたあとは緩やかながら回復基調となり、The VOCALOID Collection 2021 Autumnの開催された2021年10月第3週には2,682本と2014年12月第5週以来約7年ぶりに2千6百本を超える水準の投稿がありました。
このように歌ってみたの動向は社会情勢ともリンクしていますが、同時にニコニコ内部ではThe VOCALOID Collection(ボカコレ)の影響が如実に表れています。ボカコレの影響によって、ユーザ主催イベントが再び活発になってきており、投稿本数に大きな波が生じるようになっています。逆にいうとイベントごとがある週は投稿本数を大きく伸ばすもののその前後に投稿本数が極端に落ちるという状況が生じているということでもあり、歌ってみた全体が回復したかというと視聴者層の回復という点ではまだ道半ばという所です。これは再生中央値が今年の後半、極端に落ち込んだという点からも如実です。
こうした状況の中で、歌われた楽曲TOP30は久しぶりにニコニコ内に原曲のある楽曲のみとなりました。AdoさんとYOASOBIさんが原曲をニコニコへアップロードして下さっているという点も含めて、やはりニコニコの中に楽曲がある方が歌われやすいのは間違いありません。また、昨年は投稿された本数と上位進出に相関関係がなくなっている点を指摘しましたが、著名楽曲がニコニコにもアップロードされ続けたことにより、その齟齬はかなり解消されました。逆にいうとYouTubeのみで活動しているボカロPはとてももったいないことになっているということでもあります。実際、かつてニコニコでかなりの本数の歌ってみたが上がっていたボカロPさんの楽曲が、ご本人はYouTubeでは精力的に活動されているにもかかわらず、ニコニコへの投稿がなくなったことで、現在ではニコニコではほとんど歌われなくなってしまっている、といった実例も複数観測されています。また、J-POPなどの商業音楽についても、AdoさんやYOASOBIさんがニコニコから羽ばたいていったことを踏まえるとニコニコに公式チャンネルを公開して、オケなども準備をした上で、自由に二次創作を許容した方が良い段階に来ていると思われます。
加えて、今年の年間ランキングを見ていただくと判るように上位層が完全に入れ替わりました。
これまでのトップランナーたちも投稿はしているもののニコニコのニーズとは違った楽曲を歌っていることもあり、伸び悩む状況が続いております。その間隙を突く形で新たな歌い手さんたちが勃興しました。この流れは引き続き続くと思われますが、歌ってみた全体の視聴者が回復軌道に乗っていないこともあり、前述の通り、これまで影響の少なかった再生中央値が落ち込む事態になっています。昨年ムーブメントとなったたべるんごのうたから新たな視聴者層を歌ってみた全体に巻き込むことが出来なかった影響が今年になって大きくなってきているともいえます。踊ってみたが復調気味であるという話を聞いていますが、おそらくはVocalCharacterソングと同様に運営による継続的な支援があるためと思われます。歌ってみたについてもやはりこうしたユーザサイドのイベントを後押しするような公式サイドの継続的なてこ入れがやはり必要なことに変わりはない状況です。
そうした中、今年の紅白にはまふまふさんが純粋な歌い手として出場する決意を見せてくれています。コンポーザーとしての立ち位置も含めて、ニコニコの歌ってみたに与えた好影響は揺るぎないものがあります。今年からニコニコへの投稿を止めて、YouTubeへ完全に軸足を移されたようですが、オリジナル曲を歌ってみたタグであげるという点は現在のニコニコの動静から改善して欲しいとは思うもののAdoさんの事例なども踏まえると歌い手という立ち位置をこれからも貫かれるのであれば、ニコニコへの投稿も継続していただければ、と思うところです。
そして最後に毎年書いていることですが、引き続き一部で歌ってみたに関する誤った情報が流れている状況がちらほら見受けられます。一応13年以上毎週歌ってみたを数字で見続け、歌い手の皆様の動きなども追いかけ続けている中で、さすがにこれは変ではないかと思った件についてはTwitterにて言及させていただいております。先般NHKでまふまふさんが特集された際には、私以外で持っているとは思えないデータが一般情報であるかのように報道されていましたが、そうしたデータの提供も私から行うことも可能ですので、もし、歌ってみたの様々な情報を流すWebラジオプログラムやニコニコ公式チャンネルなどをご検討の企業団体、歌ってみたについて記事にまとめたいというメディアなどがございましたら13年以上第三者的な立ち位置で主に数字を中心に歌ってみたを俯瞰してきたものとして、最大限の協力をさせて頂きたいと思います。
なお、今年は週刊ニコニコインフォというニコニコ運営公式基幹番組にお招きいただき、ゲスト出演して参りました。タイムシフトが残っておりますので、よろしければご覧下さい。
【ゲスト: 週刊歌らん作者】週刊ニコニコインフォ 第26号 MC: 百花繚乱
https://live.nicovideo.jp/watch/lv329563618
過去には朝日新聞の歌ってみた特集記事へのご協力などもさせていただいております。
2021年の歌ってみた界隈を思うままに書いてみました。見ている位置によって見える風景は違うとは思いますが、13年以上数字を中心に歌ってみた界隈を見続けてきた私にはこんな感じに見えている、ということでご理解いただけますと幸いです。さて、2022年の歌ってみたは果たしてどんな景色となりますでしょうか。それでは、皆様引き続きよろしくお願いします!
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