第8話新しい猫を迎える

 頬と鼻の上に引っ掻き傷ができていて、チクチク痛いです。

昨夜、気持ちよく深い眠りに入ったところで、襲われました。


何にって、猫のシルに。


 シルはメインクーンという種類の大型の猫です。

猫は夜行性の動物なので、深夜、明け方に元気になります。


 たまに、遊びたくて、寝ているところに飛びかかってくるので、ビックリなんてものじゃありません。今回は、顔をやられました。


 何の警戒もしていないところに、体重八キロ超に襲われたら、悲鳴を上げるしかありません。

目に爪が入らなくて幸いでした。彼は、爪という凶器をもっているので、怪我をする危険があります。


 メインクーンは、ジェントル・ジャイアント(優しい巨人)という別名を持つくらい、優しくておとなしい猫だ、という事前情報は裏切られました。

猫にも、それぞれ性格がありますから、凶暴なメインクーンだっているのだと、思い知りましたよ。


 それでも、本猫ほんにんにしてみれば、かなり加減しているのだと思います。肉食動物ですから、人間の柔い皮膚なんて、その気になれば、食いちぎるのは簡単。



 冒頭から物騒なことを書きましたけれど、それでも、猫は可愛いんです。親バカならぬ、猫バカとお笑いください。


 子供の頃から、家にはずっと猫がいて、田舎なので、代々ネズミ退治の仕事を請け負ってくれていました。

ご近所で生まれた仔を譲り受けたり、迷い込んできた野良猫を保護したりして飼って来ましたが、一度、大型の猫を育ててみたいという夢を持っていました。


 仕事をリタイアして、不定期な臨時の仕事をしていた頃、ふと、このお給料を猫を迎える資金にできないかと、考えました。

その時、三ヶ月の契約でしていた仕事が終われば、なんとかなりそうな計算でした。


 それに、デリケートな純血種を迎えるには、飼い主にも体力があるうちがいいと考えました。

 

 猫の寿命は一般的に十から十五年くらい、先代猫は二十年長生きしてくれましたが、老猫の世話は気をつかいます。

その時、私の体力がなくなっていたら、お世話ができないかもしれません。その意味では、最初で最後のチャンスかもしれないと思いました。


 

 それから、メインクーンを育てているブリーダーさん探しがはじまりました。


 一度はペットショップにも行ってみたのですが、まあ、ペットショップは色々ありますからね。フランスでは、生体販売が禁止されたそうです。

すべてが悪徳じゃないことはわかりますけれど、複雑な気持ちなので、やめることにしました。


 それ以前に、ペットショップのケースにいる仔猫たちは、高価すぎて、予算を遙かに超えていたので無理でした。


 ネットで検索して、探していたのですが、自分でお迎えに行ける距離にいる、メインクーンのブリーダーさんは、なかなか見つかりませんでした。

ノルウェージャン・フォレスト・キャットのブリーダーさんはいたのですが、似てはいますが、やはりメインクーンを育てたかったのです。


 二ヶ月くらい、あれこれ探していたでしょうか、ある時、ブリーダーさんの紹介サイトを見つけました。

今譲れる仔猫の写真と、キャッテリー(ブリードしているお家のこと)情報が書いてあって、サイトを通じて連絡することができるというシステムでした。


 その中から、なんとかお迎えに行けそうで、ちょうど仔猫が生まれていて、かつ予算がちょうど合いそうなブリーダーさんを見つけました。

仔猫の写真を見て、「この子が欲しい」と思ってしまったのも、大きかったのです。


 ブリーダーさんとは、メールで何度かやりとりして、サイトやブログも拝見して、本当に猫が好きそうな人だと感じましたので、正式に申し込みました。


 本来ならば、一度キャッテリーを訪問して、お家のようすや、猫の状態を見せてもらってから、仮契約。

仔猫が乳離れして、譲渡できるまで育ったら(法律で決められています)、お迎えに行って、正式契約という流れになります。


 ただ、我が家からは高速で片道三時間くらいかかる距離のお宅だったので、二度伺うのはたいへんでした。

そこでブリーダーさんと、電話で直接お話しして、お互いのことを確認してから、内金を振り込み、仮契約と言うことにしてもらいました。


 その後、私が仔猫の名前を「シルル」とつけて、彼はシル、シル君などと呼ばれるようになったのです。


 当時シルは生まれてから二ヶ月くらいだったので、ブリーダーさんが時々、写真や動画を送ってくださり、成長の様子を見せてくれました。

お迎えに行くのが待ち遠しくて、あの頃は毎日幸せでした。


さて、長くなって来たので、続きは次回ということにしましょうか。猫を語り出したら止まらなくなってしまいます。

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