第50話 本づくり
教会の件は次の神父が来るまでは保留で良いとして、辺境伯の家族や領兵の訓練を暫く続けた後は、各ギルドの懐柔だな。
最終的に辺境伯領全てをカラドのようにする。ここまで終われば次は?
王都? 貴族? 学校?
王都はまだ無理だな、王太子が決まるまでは。貴族は辺境伯に相談だな。間違いなく信用がおける人を紹介して貰う。
学校は前に考えていた方法では少し不安だな。
中途半端な権力では、この世界は回せない。民主主義なんてないのだから。基本この世界は王制なんだよ。それから考えれば、王もしくは王室に力がないと駄目という事です。
貴族に力があると王政の国では逆に国が荒れる。だからこそ、この国を変えるなら王から変えないと駄目だと言うことになる。
でもこの国の王はもう高齢、それなら王太子なんだけどまだ決まっていないんだよね。
そうか! それなら一番可能性があって優秀だと言われてる、第三王子をこちらに引き込めれば色々やり易くなりそうだ。
貴族の選別と第三王子の攻略を進めれば学校も作り易くなるし、この国を変えやすくなる。
王制である以上身分制度はなくならない。人間は平等といってもこの世界の制度では限界がある。それなら下手に平民に権力を与えるより、権力慣れしている、貴族を中心に考えた方がいい。
何百年かすれば民主主義なんて事が出来るかもしれないが、今の制度で魔法を広めなければいけないなら、それに合った方法でやるしかない。
今は1000年後の事を考えてもどうしようもない。俺に出来る事は、せいぜい孫世代までの手助け程度だ。それに平和であることが一番の幸せなのだという考えが浸透するように教育すれば、途中争いがあっても平和を望むものがいれば世界が亡ぶことはないだろう……。
前世でも、人類の歴史から争いが無くなる事は無かったのだから、将来の事は未来の人に任せるしかない。
それと今俺が考えてる事を本にするのもいいな。色んな分野の本も作らなければいけないけど、 前世の知識を書き残すのもいいな。
これも一つの教科書になるだろう。倫理、道徳? 少し違うが、中国の孔子とか孟子の教えのような扱いになれば少しは役に立つかな?
前世でも王制から共和制、民主主義へと歴史は変わって行ったが、王制が無くなった理由を残しておけば、王族の教科書にもなる。
当然そんなの無視する奴も居るだろうが、その結果が王制の崩壊なら歴史が本の内容を証明してくれる。
こういうのって予言書的なものになるのかな?
やはり本を沢山作ろう! いろんな分野の本を! その為にはコピー魔法を開発するか? いや、やっぱり活版印刷も作ろう。そうしないと魔力量で出来る本の数が少なければ本が高くなる。
コピー魔法はコピー機の扱いにして、会社などでの使用法と同じにすればいい。コンピューターみたいなものが出来ない限り、紙文化なら印刷は必要だ。
うちの領は木工が得意だから、文字の木型を作って、それを使って金型を作り、金型で鋳造の型を造ればできるじゃん。
木型だけでも作れるけど木型だと何度も使ってれば角が直ぐにすり減り、文字がぼやけてしまう。金型の方を沢山作った方が良い。
木工職人に裏文字の木型を作って貰って、ドワーフのロダンに金型を作って貰おう。
うちは木工職人は多いから、全文字の木型は一週間で完成した。
ここからはロダンに相談だ。
「ロダンこれで金型作ってくれない?」
「こりゃまたこまけぇ仕事ですね」
「そうなんだ。それに難しいとは思うけど出来るだけ角をしっかり出して欲しいんだ。それが出来たら鋳造の型をそれでとって鋳造して欲しいんだ。」
ついでに、ロダンにコークスの作り方と玉鋼の作り方を教えて、製鉄の効率化や刀作って貰おうかな……。
それに溶けてる鉄に木炭の粉を分量を替えて入れてもらって、出来上がった金属の硬さを調べてもらおう。上手くいけば鋼が出来るかも? こういう事はドワーフは好きだからね。
「ところでレオ様そんなもの作って何をするつもりで?」
「それはね、本を大量に作るのさ。例えばこんな感じ」
木型を並べてその木型にインクをつけて紙に押し当てる。そうすることで文章が紙に移るのを見せる。
「なるほど! 本のページ全部の木型を並べれてインクをつけて紙に押せば一度にページが完成するし、何度も使えるから同じ物を早く大量に作れると言う訳ですね。それを木型じゃなく金属で」
ロダンは活版印刷の仕組みが解ったようだ。これが出来れば将来印刷機なんてものも出来るかな?
俺だって前世の知識があると言っても全てじゃないし、完璧でもないからこうして
そうだ忘れてた。よく使う文字とそうでないもので作る個数を変えてもらわないと、ロダンが一式作り上げるまでに調べておこう。
今の本の大きさで装幀に必要な部分を分けた枠を作って貰って、そこに裏文字の型を並べて印刷すれば、今、本を作ってる職人がそのまま作れるね。
それから半年後、俺が今までに研究して解った、魔法の基本的な部分だけを書いた本が出来上がった。
詳しい事や応用は今は秘匿する。付与魔法とか鑑定魔法の進化とか魔法陣を消せることなど、今はまだ早いと言えるものは本にしても一冊だけにした。手書きで書いて秘匿する。
こんなことしてると、アーティファクトじゃないけど古代魔法の文献とかに成らないかな? そうならないように出来るだけ早く公開できるように持って行くしかないね。
そして本が出来上がる少し前に俺が急いで研究した。魔法障壁ともう一つの魔法も完成したので勿論本に載せた。
魔法障壁がないと殆どの人が時間を掛ければ一属性ぐらいは初級の攻撃魔法が使えるようになるので危険だ。攻撃魔法も身を守るためならいいが戦争などに使われたらたまったものじゃない。
初級魔法程度では戦争には使えないと認識させるにはこの魔法障壁が必要。戦争や悪事には魔法を極力使えないようにしておかないとね、完全には無理でも……。
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