第32話 王様を助けろ

 結局、レオが抜けてから夜中までギランとサンズを含めた騎士たちの話し合いは続いたそうだ。いつものように大きなメリット、今思うと決して小さく無いデメリットの話までして、後は自分たちの生活状況、家族も含めての状況を話して聞かせて、最終的に返事を待つことにして、その話し合いは終わった。


 翌日、徴税官たちは何事もなかったように午前中に帰って行った。だが騎士たちの心中は様々な思いが駆け巡っていたんだろうね、どこか上の空という感じがしたから。


 それはさて置き今はサンズ達の返事を待っている余裕はない。王都の状況があれだと辺境伯の動きが非常に気になってくる。直ぐに攻めてくるだろうか?


 継承権争いが活発化してるなら、辺境伯がそれなりの頭を持ってれば、内戦まで待つだろうが、馬鹿そうなんだよな。


 10日待とう、それまでに動きがなければ、多分今年は無い。


 家の馬車やリバーシが売れてる事は知ってるだろうから、動くなら年明けから春、家を飼い殺しにするならそれが一番。


「ちち~~~~」

 

 何時のまにか家族会議招集号令になってしまった、レオの叫び。


 今回の会議はいつもと違い、レオの独壇場。これからの行動、起こりそうなこと、王様の状況など、全てを報告して、対策の内容に了承を貰うだけ。


 誰がどう聞いても今回はこれがベスト、反論も質問もなかった。


 ・ボーガン作成 量産 (出来るだけ魔法を秘匿する為)

 ・辺境伯領の情報収集  (行商、商業ギルド経由)

 ・旧カラド、開拓地に家を量産(二階建てアパートタイプ)

 ・10日後、王都に向かう(俺、ロック、サイラス、ギラン、レウス)

 ・王都到着後情報収集 (王の容態確認、王族保護対象確認)

 ・王都スラム調査   (人口、人種、犯罪者グループなど)

 ・サンズ接触     (継承権派閥争いの情報)


 他にも色々あるがこの項目から想像できるのは、何か?


 ・王様の病気の原因が毒ではないかと推測してる

 ・スラム脱出作戦 part2

 ・王族保護により正式な継承者を残す。


 大まかにはこんな所、みんなにはまだ言ってないけど、俺はこの国を乗っ取る、独立してこの国と同盟、カラドの治外法権、これらのどれかを選択する日がくると思っている。


 それでも救える命は救いたい。無駄な血を流すつもりはないから、王様の問題が解決するかしないかで、行動はかなり変わるが、どうしようもなければ最悪王子暗殺も視野に入れている。


 結局10日経ったが何も起きなかったから、計画通り俺は王都に行く。もしこの後何かあっても、その時は父と爺様だけで何とかなるだろう。


 今回の王都行きは、馬車は使わない。基本身体強化で疾走して、身体強化の長時間使用の訓練を兼ねる。但し俺の収納には馬車が30台入っている。これは何かあった時の為の予備。


 4日後、王都到着! 馬車より断然早い。


 今回は身分が解っても問題ないので、カラドの身分証を使う。


 当然貴族の子息と護衛の騎士という立場で王都に足を踏み入れる。


 警備兵もなんで貴族が歩きなんだなんて思わない。貧乏貴族丸出しだから俺たちの格好。


 先ずは拠点決めと王都の散策兼情報集だね。拠点は別段何事もなく、直ぐに見つかった。今回は出来るだけ貴族街に近い宿。王城の情報は厳しくても、それに近い事が貴族の屋敷から取れるだろうからこの場所にした。遠耳があるから、貴族街に行けばいいだけだからね。


 それから2日俺達は、貴族街を中心に、街中、スラムなどの調査をした。


 分かったことは


 ・王様は急に倒れたのではなく、徐々に弱ってると言う感じ

 ・継承権貴族派閥はかなりやりあっている。第一、第二王子の争い。第三王子は静観

 ・辺境伯は第二王子派閥、王都にいたよ。貧乏貴族には関係ない社交界がシーズン中

 ・王都の景気はかなり良くない、物がない、インフレが酷い

 ・スラムは何処も同じ、2大グループで構成員がかなり多い、人口は5000人以上


 2日間でここまで分かったので、今日はサンズに会いに行く。


 会いに行くのは、ギラン。 俺は宿で待機してサンズに宿に来てもらう。その方がサンズに要らぬ迷惑を掛けない。


 ギランが出かけて結構時間が過ぎてるが、戻ってこない何かあったのかな?


 戻って来た時には前回護衛で来ていた騎士全員を引き連れていた。そういうことね。


 部屋に入るなり、5人とも一斉に頭を下げ


「宜しくお願いします!」


 王都に戻るまでの10日、色々5人で話したんだろう。どう考えても今の王都に希望は無い。内戦になれば家族も巻き込むし、この争いが国を守るとかいうなら話は別だが今回は違う。


 サンズ達が思っているのは、私利私欲の争いに巻き込まれるのは嫌だ。そんな時辺境ではあるが希望の手を差し伸べてくれる人がいるのだ、これをつかまない方が後悔する。


「うん! 宜しくね」


 そこからはサンズ達が調べた事と俺たちが調べたことのすり合わせ。俺たちが知らないこともあったが、概ね同じだった。その結果王様の毒殺疑惑は確定した。


 そこで、一番にこの王都でやらなければいけないことが、自動的に決まった。


 それは、王様の病気を治す事。


 これが出来れば、暫くは内戦にはならない。ついでに王子二人を始末できれば内戦はなくなる。


 第三王子はまだ若いが優秀だそうだ。上二人がいなくなれば王様が生きてる間はこの国ひいてはカラドが安泰になる。


 そうと決まればどうやるかの作戦会議。


「ギラン、明日は服を作りに行くよ」


 作戦会議だと思ってたのにいきなり服作る宣言、ギランは困惑した。


 サンズ達もあっけに取られてる。


「ギラン、今は何のシーズン?」


「初冬? あ! 社交のシーズンです」


「正解」


 近々、王城で年に一度のパーティーが開かれる。今はそんな時では無いように思うが、この国の貴族は腐ってるのか、王様より自分たちの見栄や人脈作りの方が大事らしい。


 ま! 今回はそれが有難いんだけどね。このパーティーに乗じて潜入、王様を治療する。


 そこで今回どうしても必要なのが服なのです。


 貧乏貴族の服装では入れないだろうし、入れても目立ってはいけないから、ごく普通の貴族服が必要なのです。


 ここまで説明するとみんな納得顔、でも、もう一つあるんだよ。


「サンズ、近衛騎士に知り合い居ない?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る