第79話 おい!
「おい、鮒田!」
「なんだ、晴臣か。入ってくるなり不躾な。見ての通り、対戦中だ。後にしろ」
ちっ、仕方ない。店員の俺が邪魔するわけにはいかない。気を鎮めて店内を見渡すと、驚いた顔のお客さんがこちらを一斉に見ている。やってしまった……。
平日でもSMCは大盛況だ。召喚免許制度が後押しとなったようでコロッセオの数を倍にしても対戦待ちが発生する状態。そんな中、ハイオークの武蔵はいつも注目を集める。そして、以前からいた取り巻きどもは熱量を増していた。
「武蔵の必殺技、大旋風だ!」
「ブイ!」
「武蔵に付け入る隙なし!」
「ブイブイ!」
「強い、強すぎる!!」
「ブイブイブイ!」
オーク至上主義集団、"オークランド"。もちろん主催は鮒田だ。こいつらは対戦していなくてもオークを召喚し、一緒に武蔵の試合を観る。勉強なんだとか……。
「そこまで! 勝者、武蔵!!」
立会人の声が歓声を呼び込む。武蔵の足元に倒れるのはハイリザードマン。モンスターの格としては武蔵と同じだが、磨かれた技で圧倒したようだ。オークランドの連中が鮒田と武蔵に心酔しているのも少し分かる気がする。
「待たせたな、晴臣。一体何の用だ?」
ゆっくりとコロッセオから離れた鮒田が鷹揚に話す。こいつ、オークランドの連中の前だからって、余裕をかましやがって……。
「話がある。スタッフルームに行こう」
「よかろう」
#
「鮒田、お前だろ! サモナーズ・フィールドのオープニングイベントに俺が乱入するとか掲示板に書き込んだのは!!」
「……知らんな。なんのことだ?」
「しらばっくれるな! これを見ろ!!」
スマホを取り出し、掲示板のスクショを鮒田の顔に押し付ける。こんな無責任な煽りをやるのはこいつしかいない!
「……何処で情報が漏れたのか」
うん? なんだって?
「晴臣よ。お前は乱入なんてする必要はない!」
「いや、誰がやるといった?」
「その必要はないんだ!!」
こいつ、何を言っているんだ? おかしくなったのか?
「お前はスペシャルゲストとしてサモナーズ・フィールドのオープニングイベントに参加するのだから!!」
「はあああぁぁぁー!? お前、また勝手なことを!!」
「勝手ではない! ちゃんとお前の母親、いや水野ダンジョンパークの園長にも承諾は得ている!!」
「オカンを巻き込むな! ふざけやがって!! 俺は絶対にオープニングイベントなんかに行かないぞ!!」
「ふははは! それは無理だ!! もうすぐ正式に発表されるからな」
「何が発表されるって?」
「オープニング記念、SMCオールスターズ VS スーパー・サモン・シスターズのエキシビションマッチに決まっているだろ!! 見ろ!!」
鮒田はスマホを取り出し、俺の顔に押し付ける。そこにはエキシビションマッチのフライヤーが映し出されていた……。
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