第2話 魔石?

「うーむ」


裏庭を見て思わず唸ってしまう。昨日は午後、地元の友人に呼び出されて何の片付けもせずに出掛けてしまった。そして今朝になって見てみると、昨日掘り返した穴が元の状態に戻っている。


面倒くさがり屋の母親が土を戻したとは思えない。それに、昨日と全く同じように穴も空いているのだ。やはり、普通ではない。常識から外れた事態が起こっているのだ。


昨日と同じ位置にあるシャベルを拾って構える。


「よしっ! 掘るぞ!」


あえて声を出してみるが反応はない。虚しく裏庭に響くだけだ。とりあえず掘ってみよう。


「フンッ」


「ギィー!」


えええっ! ちょっと早くないか?


シャベルを引き抜いて土を退けると、昨日と同じように小さなゴブリンが痙攣している。またやってしまった。


しばらく見ていると昨日と同じようにゴブリンは煙になり、魔石? だけが残る。


「冒険者ギルドがあれば買い取ってくれるのかなぁ」


下らないことを言いながら穴を掘り進めるが、今のところ犠牲は5体だけだ。透明な魔石がズボンのポケットに溜まっている。


しかし一体どこまで続いているのか? ウチの敷地内で収まればいいが、隣の家にまで伸びているようだと流石に──。


「ギギ!」


「わっ、出た!」


穴から飛び出してきたのはちゃんと生きているゴブリンだ。今までと違ってシャベルの犠牲にはなっていない。


「ギギギ!」


足下まで駆け寄ってきたゴブリンは棍棒のようなもので靴を殴りつける。サイズの違いなんて関係ないのだろう。凄まじい闘争心だ。流石にこいつを放っておくことは出来ない。


「えい」


「ギィー!」


爪先で蹴飛ばすと、ゴブリンは1メートルほど宙を舞った後、地面に叩きつけられた。そしてお決まりの痙攣の後、煙になって魔石が──。


って、ちょっと違う! 今までの魔石じゃない。サイズ的に倍以上あるし色が緑だ。そして何やら石の中に模様が見える。うむむ。当たり? これは当たりの魔石なのか? 冒険者ギルドの買取価格が何倍にもなったり、先輩冒険者の前でひけらかすと妬まれたりするやつか。


念のために周囲を見渡すが、大丈夫だ。誰にも見られていない。まぁ、田舎だしそれぞれの家の敷地が東京と比べると比較にはならないからな。


そっと当たり魔石を拾い上げ、先程のノーマル魔石と見比べる。ノーマルの方はまぁ、ただの透明な石だ。何も感じない。しかし当たりの方は違う。拍動するように、ゆっくりと光っている。まるで、生きているように。


色々試してみるか。俺は2種類の魔石を持って自室にもどった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る