第15.2話 露見(後半)

「で、しずくちゃんとの道ならぬ恋についてはどうするつもりなの?」

3人で会話をしていたときの高いテンションから一転、静かな口調で北山がストレートに爆弾を投下する。


「やっぱりさっきのはわざとだったんですね。惟子さん性格悪いですよ……」

「そりゃー、あんたたちの言動を見てその答えに至らない方がおかしいでしょ。特に、しずくちゃんは私に対してあからさまな態度をとりすぎだし。んで、智久君はどうするつもりなの?」

「どうするも何も、上り調子のアイドルとそのプロデューサーですよ。選択肢は一つしかありませんよ」

予想通りかつ当たり前すぎる戸松の回答に、北山も苦笑する。


「まぁね。智久君がすべてを投げうって二人逃避行……なんてことができるタイプでないことは重々承知しているし。そもそも、あなたに音楽以外で生きる術なんてないものね。今のレーベルのKYUTEへの力いれようを考えると、二人が付き合ってるなんて疑惑が持ち上がっただけで間違いなく業界干されるだろうね」

「えぇ、仰るとおりで……」

「それなら、あなたたちお互いの接し方をいい加減何とかしなきゃでしょ。一応自覚はあるんだよね?」

「……それは」

容赦なく降りかかる正論に狼狽し、返答に窮する。


「いや、分かってるのよ、明らかにしずくちゃんの方に問題があるっていうのは。ただ、プロデューサーって立場である以上、君が決着をつけなきゃ。こんなことを言うのは酷だけど」

「……はい」

「ま、もし智久君の中にもまだ彼女への恋心が眠っていて、夜を寂しく思うなら、今度は私が慰めてあげるから。あなたの初めてを奪ってしまった人間として、その程度ならいくらでも付き合ってあげる」

余計なほどにお説教モードになってしまったのを後悔したのか、最後はいつものように軽口をたたく。

尤も、戸松にとってその冗談は全く笑えない内容であった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る