第74話

 潮田の死と俺たちとの関連までは分からないが、少なくとも南由との関連はある。俺よりも先に病室を出た永里と三浦は見ていないし、聞こえてもいなかっただろうが、帰る間際、潮田はあの怨霊に頭を締め付けられながら、うわごとの様に「家族は一緒にいるべき、南由は僕と一緒にいるべき」と繰り返していたのだから。


 三浦は「なんだよ、紘大さんまで……」と口を尖らせた。


 拗ねたような顔が、先生に叱られた小学生のようで思わず吹き出すと、三浦は照れ笑いを浮かべて「まあ僕は、潮田が社内で親しい奴がいないから、香典を持って行けって押し付けられちゃったから仕方ないんですけど。紘大さんまで付き合わせちゃって申し訳ないというか……すみません」と頭を下げた。


 「いいんだよ。俺も潮田の家族から、見舞い客のリストを見て、『お友達だと思ったから』ってわざわざ連絡をもらったんだ。それなのに葬儀に来ないのもちょっと後味悪いし」と言って三浦の背中を軽く叩いた。


 それにしても寂しい通夜だった。社会人になって数年の俺では、通夜に参列した経験値は少ない。しかし高校時代に出席した同級生の通夜には、同じくらいの年齢の参列者が大勢いた。オートバイの事故だった。クラスメイトは半ば強制参加だったせいもあるかもしれないが、そうだとしても、そこここですすり泣く声が聞こえていた。

 ふう、とため息をついた。

 葬式って、悲しんでいる者が少ない程、寂しいもんなんだな……。

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