第42話

 しかし南由の安心をなくすために、人を傷つけるなんてことがあるだろうか? あまりにも妄執もうしゅう的すぎる。

 もし、南由を付け狙っていた人物と、コンビニ事件の犯人が同一犯だとしたら、南由を手に入れるためには、無関係な人間を躊躇ちゅうちょなく傷つけるような相手だということになる。俺たちの手に負える相手じゃないのかもしれない。


 「まあ……、南由の件とコンビニの犯人が同一人物かどうかはわからないから、とりあえず、合コンの幹事をしていたっていう三浦さんから話を聞いてみようか」


 俺は小刻みに震え出した手を隠すように、両手を組んで言った。

 永里は俺の怯えに気が付かない様子で、スマートフォンを鞄から出してうつむいたまま操作している。


 「これでよし、っと」


 永里はスマートフォンを手の中で回して、トークアプリが開いている画面を見えるように、俺の目の前に置いた。


 「至急。今、大丈夫? あの合コンメンバーについて聞きたいので連絡ください」

 「今、このメッセージ送ってくれたの? すごいな」


 永里の行動力に感心する。


 「三浦さんには俺が一人で会うよ。やっぱり危険だよ。犯人が簡単に人を傷つけるような相手だとしたら……」


 「三浦君は私の以前からの知り合いなんです。私が行かないのは不自然だし、初対面の紘大くんに、友達の不利な情報なんか話さないですよ。三浦君に会うのが危険だとも思えないし。彼の話を聞いてから、犯人捜しをどうするのか決めてもいいんじゃないですか?」

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