123_相手を説得したけりゃエビデンスを持ち出すのはNG #話術 #理屈

「ルネサンスのフランスの哲学者ミシェル・ド・モンテーニュは著書『エセー』で『「運命を利用する者は人にぬきんでる。そしてみんなが彼を知恵者と誉めたたえる。」だからはっきりと言おう。どうしても、結果はわれわれの価値と能力についてほんのわずかの証拠をしか示さない、と』と記しています」


「ヤッホー、利口な読者様。読むだけで人生がいい感じになる知識を提供する世界一の美女サクラです! 今回は『相手を説得したけりゃエビデンスを持ち出すのはNG』のお話をしますよ」


「では、よろしくお願いします」


「読者様は他者を説得する際に、どのような言葉を投げ掛けますか?」


「証拠に基づいた言葉を投げ掛けますか? それとも、ご自身が体験したことを基に話を展開しますか?」


「え? 『理論的に考えて、証拠が大事』ですか。その通りですね。誰もが納得するのは証拠、つまりエビデンスでしょう」


「ですが、本当にエビデンスで他者を納得させた経験がありますか?」


「実はですね、エビデンスというのは説得に向いていないことが判明しました!」


「エビデンスは確かに素晴らしいです。でも、人々を納得させる材料になるとは限らないのです。理屈が通じない人は多いのです」


「今回の研究はノースカロライナ大学のものです」


「まず研究者は、道徳的な問題について、251人の参加者に意見を聞きました。同姓の結婚や中絶などの問題について考えてもらいました」


「参加者には、自分の意見に賛同が得られない想像をしてもらいました。その後、どのような説得をされたら相手の意見を聞き入れるか調査しました」


「参加者には自由形式で回答しました。その結果ですね、55.78%がーー」


「エビデンスを出されたら相手の意見を尊重する、と回答しました」


「次に個人的な経験を話された場合に意見を尊重する、と回答したのが21.12%でした」


「つまり、半数の人はエビデンスを突きつけられると、相手の意見を尊重する、と思っています」


「さて、本当にそうなのでしょうか? 今回の結果はあくまで自由形式の回答です。頭の中の考えと実際の行動が違うことは往々にしてあります」


「そこんとこと、どうなのよ? ということで調べています」


「研究者は動画サイトのコメントを調査しました。エビデンスに基づいて作成された動画と個人的な体験を語った動画、合計194本の動画から30万978件のコメントを精査しました」


「その結果、エビデンスを基にした動画より、個人的な体験を語った動画のほうがポジティブなコメントが多かったそうです」


「なるほどねぇ。事実に感情移入するのは難しいのでしょう。そのため、感情移入しやすい、個人的な体験にポジティブな言葉が集まったのでしょう」


「また、ニュースの記事でも確認しています」


「研究者はニュースに、エビデンスを強調した記事と、個人的な体験を強調した記事を載せました」


「その結果、やはり個人的な体験の記事のほうがいい結果を得られました。より合理的であると判断されました」


「口では、エビデンスが大事だなんだ、と言っておきながら、実際はエビデンスに好意的な意見は寄せられなかったのです」


「他にも、3つの研究から、エビデンスで語るより、個人的な体験を語る人のほうが尊重される、と結果が出ています」


「それに、個人の体験がより苦しいほど尊敬が強くなることが判明しました」


「読者様がいくら事実を語った所で、相手からの尊敬されることはないのです」


「人を動かすには、エビデンスより個人の経験だったのです!」


「どうですか? 読者様は経験を語ることはありますか?」


「え? 『恥ずかしいから、していない』ですか。ダメですよ。尊敬の眼差しを得るために、自分語りをしましょう」


「ただ、自分に酔って、煙たがられないようにしましょう」


「さらに研究者は、銃の規制に関して反対意見を持つ人が、エビデンスに基づく意見を言った場合と、個人的な体験に基づいて意見を言った場合で、どのような反応をするか調べました」


「すると、面白い結果が出ました」


「反対意見を持つ人がエビデンスに基づいて意見を言った場合、疑問を抱きました。要は意見について反論しました」


「対して、反対意見を持っていても個人的な体験を言った場合は、特に疑問を抱かず、そのまま受け入れました」


「つまり、反対意見を持っていても、個人的な体験を語れば受け入れてくるのです。反対している人を説得するには、個人的な体験が大事なんです」


「しかも素人の意見であっても、真実だと見なしていました。学者が語る理屈より、素人の個人の体験のほうが重視されるのです」


「エビデンス、形無しじゃん」


「逆に、エビデンスを中心に話していたら、議論はヒートアップすること間違いなしです。相手も意固地になってしまうでしょう」


「このような結果になったのは、エビデンスは反論できるのに対し、個人的な体験を議題に上げるのは難しいからです」


「科学的な証拠というのは、反対意見を探せば無数に出てきます。簡単に反論することができます。この研究だって、反対意見の論文も探すのは難しくないです」


「なのに、個人的な意見に反論するの難しいです。いえ、無駄、というべきでしょうか?」


「私が『コンビニの店員の態度が悪かったんです』と、いくら語っても読者様が反論するのは難しいですよね」


「主観的な気持ちを議論した所で、建設的な意見は出てきません。ですので無駄、というわけです」


「私のどうでもいい話をお送りした所で、今回のまとめです。人は口では個人の体験より、エビデンスを重視すると語りますが、事実は違います」


「エビデンスに基づいた話より、個人的な体験を尊重します。それにポジティに受け取られたり、合理的とも判断されます」


「それに反対意見を持つ人でも、個人的な体験を語れば説得することができることが示唆されました」


「読者様もこれからは個人的な経験を語って、尊重される人になってください」


「説得の手助けになってくれます」


「ただ、個人の体験ばかり語っても中身がなければ、建設的な話もできません」


「ある程度はエビデンスを含めるべきだと思います」


「つまり、エビデンスに基づく個人の体験が、最強? ですかね?」


「ともかく、私もこれからはエビデンスだけでなく、個人的な体験を踏まえてお話をしたいと思います」


「ということで、今回は『相手を説得したけりゃエビデンスを持ち出すのはNG』のお話でした。読者様の人生の潤いになれば嬉しいです」


「お付き合いいただき、ありがとうございます。高評価や応援コメント、質問やリクエストも待ってまーす!」


「次回の『男性より女性のほうが心を読むのが上手くて、男性より女性のほうが心を読まれやすい』で、お会いしましょう!」


「もしくは、読者様が気になるお話でお待ちしております。さようなら」



参考文献

Personal experiences bridge moral and political divides better than facts

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