幽霊のように消えた私は、君に届くことはない
長月紅葉
君との出逢い
私は電車に乗っている。そして、私の目の前には
花束は私の好きな花が沢山だ。スイートピー、ネリネ、アネモネ、まだら模様の薔薇。様々な種類があって、見ていて飽きることのない花束だ。
光星くんとはよく電車に乗ってどこかに出かけていた。お互いに旅が好きだったというのもある。一緒に目的地に向かって移動して、観光することが好きだった。
光星くんと一緒にいる時間が好きだった。
電車に乗っていると、出逢った時のことを思い出す。
■
私がまだ旅が好きではなかった頃。
電車を乗り間違えて見知らぬ土地にたどり着いたことがあった。スマホの充電はなくなり、どこに行けばいいのか分からなかった。
1人ぼっちで泣きそうだった。途方に暮れている時に光星くんが「大丈夫ですか?」と声をかけてくれた。
この時のことを付き合ってから聞いたことがあった。「何で私に声をかけたの?」と言うと、光星くんは少し照れながらも「困ってる人がいたら助けるのが当たり前だから」と言ってた。
光星くんに助けてもらって、なんとか目的地に着くことができた。なんと光星くんは「心配だから」と言って一緒に来てくれた。目的地に到着後に、申し訳なくなってお礼をすると言うと「あたり前のことをしただけですから。気にしないでください」と言って帰っていった。
連絡先を知らないし、どこに住んでるかも分からない。お礼はできないままになっちゃうなと思っていると、神様のイタズラのようなことが起こった。
新年度が始まる春。私の部屋の隣に引っ越してきたのが光星くんだった。お互いに「あっ!」となって、そこから会話をするようになった。
ちなみに再会してからすぐに「助けてくれたお礼」と言ってマグカップをプレゼントしたりもした。
光星くんは凄い喜んでくれて「別にお礼なんていいのに」と言いながらもニヤけてたのを覚えている。光星くんが喜んでくれて嬉しかったのも覚えている。
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